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vol.49Yell Vol.1“ Viewpoint of the sage”

小山田 浩定福岡ベンチャークラブ会長

変わりゆく世の中で生き方を問う。
そのヒントは古典の中にあり。

福岡ベンチャークラブ会長としてベン チャー企業の事業拡大に尽力している小 山田浩定氏。1978年に7人の有志と ともに立ち上げた総合メディカル株式会 社は、売上高1354億3166万円(2018年3月期)・従業員7146名(連結、2018年7月1日現在)という大企業へと成長を果たした。激動の時代を駆け抜けてきた小山田氏が、迷った時、悩んだ時、苦しんだ時に立ち返るのは、幼い頃から親しんだ古典の中にある言葉だという。
変わりゆく時代にあって、古典の言葉を心の糧としてきたのはなぜだろうか。
小山田氏曰く、そこには、リーダーと して、ビジネスマンとしてはもちろん、人として生きる上で大切なことがたくさん詰まっているという。そんな小山田氏に古典の奥深さはもちろん、知る喜びや日々の生活で活かすための心のありようについて伺った。

新世代のビジネスリーダーに贈る Yell

小山田さんは、幼い頃から古典に親しまれてきたとお伺いしました。古典の良さを教えてください。

私の育った九州南部では、日常的に儒教の言葉が使われていました。経営にお いても、行き着くのは古典、特に儒教の教えです。私は社員に何かを伝えたいとき、日頃から難しい言葉は使いません。また、表現に困ったときは、自ら古典に立ち返り、そこから話すことがあります。
私が会社を運営していた際に大切にしている言葉があります。「徳によって興り、徳に背いて亡ぶ」という言葉ですが、これも古典からの引用です。この言葉はとてもシンプルですが、真理を非常によく物語っています。こういった言葉を心に留めておくと、その都度、自分の行動や考え方を見直すことができますし、人としてやって良いことかどうか、どのように周囲に振る舞ったらいいか、自ずとわかってくるものです。その結果、周囲からの信頼を得ることもできます。
最近ニュースを観ていると、残念なが らリーダーとしての品格や、人として大切にしなくてはならないことが欠如している人が増えているように感じます。一所懸命勉強をして立派な資格を取得していても、ご自身の立場や資格に見合った人格を持たず、見合わない行動をしてしまえば、今まで積み上げてきた信用を崩してしまいます。これは本当にもったいなく、悲しい事です。
私たちは、全知全能の神ではなく、動物です。ですので、ブレてしまうのも仕方のないこと。だからこそ、自分を、気分 を、優先させるではなく、自分を含め、全体がどうしたら最適となるのかを考えていくことが大切なのではないでしょうか。

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1.創業は1978年。商号を株式会社総合 メディカル・リースとして、資本金2000万で 創立された。2.2000年に東京証券取引市場第二部に株式上場を果たした。その際のセレモニーの様子。3.さまざまな医療分野クリニックや薬局などが揃う「つきぐまメディカルモール」(福岡市博多区)4.東京の「メディカルモール豊洲」(東京都江東区)をはじめ、全国に96軒の医療モールを展開している(2018年6月末現在)

数ある古典の中でも、小山田さんおすすめのものがありましたら、教えてください。

安岡正篤先生や伊與田覺先生、新井正明先生の教えは、とても素晴らしく、何度も読み直しています。また、我々の世代に近い、実践哲学者とも呼ばれる森信三先生のご著書からは、今でもたくさんのことを学んでいます。知恵とは何か、とてもわかりやすくまとめてあります。経営者として、知っておくべき内容がたくさん出ています。
数ある言葉の中でも、「弱さと悪さと愚かさとは、互いに関連している。けだし弱さとは一種の悪であって、弱気善人では駄目である。また智慧の透徹していない人間は結局は弱い。」という言葉は、とても真理を突いた言葉であると思 います。この言葉の意味を知っている か、知らないかで、大きな差が出てくるでしょう。弱い心に人は飲まれてしまいがちです。しかし、しっかりとした知恵があれば、その時々に自分がすべきこと、してはいけないことが自ずと判断できるはずです。
どの本にも「論語」などの古典に通じるところがあります。世界的規模で世の中に残る教えは、すべて根底が同じだと思います。道義や道徳を守るということが、自分を守るということにつながるという考えは、世界共通なんですね。
また、国際基督教大学の初代学長の湯浅八郎氏の生活信条の言葉も秀逸です。「人生とは愛である。愛とは理解することである。理解することは許すことである。許すことは救われることである。」私はここでいう「愛」を親身になること、一体となることと言い換えています。

これからの起業家に知っておいてほしいことはありますか。

自分中心の言行は、周囲との摩擦や衝 突しか生み出しません。原因自分論で考 える。自身が謙虚であるかどうかが大切 だと思います。
先ほどお伝えした「徳によって興り、徳に背いて亡ぶ」には続きがありまし て、「倹によって栄え、奢によって亡ぶ」という言葉があります。これを自分のものにするだけで、随分と変わります。つまらないことに腹を立てていたら、何も始まらない。怒っていても何も解決しない。でも、若い頃は、ついやってしまいますし、余計なことを言ってしまう。しかし、この反動に何年も足を引っ張られてしまうことだってあるんです。私も若い頃はそうでした。
経営に大切なのは、高潔さです。会社を興しただけでは、人はついて来ません。ですので、私が総合メディカルを興した時、身内を入れない、経営権に執着しないと決めました。「会社や社員は、社会からの預かり物」という意識を持って、徹底的なガラス張りの経営を心がけて来ました。経営の理想は、求めるものではなく、自分自身の矛盾をなくし、理想の経営を目指して行くべきだと私は考えています。

小山田さんは、昇進した社員の方に本をプレゼントしているとお伺いしました。どのような想いで送っているのでしょうか。

昇進し、部下を持つ立場になると、今までとは違う問題や悩みを抱えることになります。リーダーに求められるのは、高い志であり、ブレない信念であり、人間力です。ですので、そのようなときに役に立てばと、応援の気持ちで本をプレゼントしています。贈る本はその都度、社会的背景や会社の状況をみて、時勢にあったものを選ぶようにしています。忙しい毎日でも、さっと目を通せるもの、 負担にならないようなものです。
私がいい本だ、素晴らしい本だと思い、押し付けてはいけません。相手と一体となり、本を選ぶように心がけています。

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終始おだやかな表情で、人生や会社経営において語る小山田氏。平易な言葉だが、そこには深い含蓄と愛が含まれていた。

最後に、読者の皆様へのメッセージや励ましのお言葉をいただけますか。

私から皆様に励ましの言葉なんて、とても恐れ多いことです。でも、ひとつだけ言えるとしたら、今、生きている意味 を、この世に存在している重みを、しっかりと知ることが大切だということです。これを知るためには、志を持つことです。志を持って生きる人は、現実とのギャップに必ず遭遇し、それを分析して批判・反省というものがおきます。ここに見識が生じ、その見識を高めることで、自分をいつわらない、人に恥ずかしくない生き方ができます。そうすることで、かけがえのない人生を価値高く生きることができます。

『先哲の言葉』

新井正明
先人に学ぶリーダーの要諦 致知出版社/777円(税別)

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『己を修め人を治める道』

伊與田覺
「大学」を味読する 致知出版社/1,944円

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『一日一言』

森信三
修身教授録 致知出版社/1,234円

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小山田 浩定おやまだ・ひろさだ

1940年、東京都生まれ 1945年東京大空襲の後、鹿児島県に疎 開。その後、父の出身地である宮崎県で育 つ。宮崎県立都城泉ヶ丘高校卒。1978年 総合メディカルを7人の有志で創業して専 務取締役に就く。1980年代表取締役専務、 1990年同社長、2004年同会長、2012年 取締役相談役を歴任して、2017年相談役。 この間、2000年東証2部上場、2001年東証 1部指定換え。2009年9月福岡ベンチャーク ラブ会長に就任。