小山田浩定氏福岡ベンチャークラブ会長

vol.45Special Interview

小山田浩定氏福岡ベンチャークラブ会長

ベンチャー企業のビジネスモデルはリーダーの人格形成によって実を結ぶ

 中小・ベンチャー企業の事業拡大や新事業を創出していく福岡ベンチャークラブ会長を務める小山田浩定・総合メディカル株式会社相談役は、40年前に元同僚と7人で創業して、グループ従業員5700人強の東証一部上場企業に育て上げた実績を持つ。ベンチャー企業が事業を拡大・発展させていく上で何が必要なのか、小山田会長に聞いた。

ビジネスモデルとともにベンチャーに必要なモノは何か

いま、福岡は県・市ともにベンチャー企業への支援に熱心です。いろいろな集まりが開催されて、投資が得られるチャンス もあるなど、ビジネスを立ち上げて相当なスピードで進めていくことができるのは、非常に良い状況だとみています。

 

近年のベンチャー企業の方々はよく勉強されており、しっかりしたビジネスモデルをお持ちですが、企業経営の要諦は、そ の他にもあります。経営者が社員とともに現場で汗を流し、お客さまの反応も直にわかる創業期においては、ビジネスモデルの勢いで一気に販路を開拓・拡大でき、事業を成長させていくことができます。 しかし、ある一定規模以上になると、組織として管理していく必要が生まれ、社員の能力や特性を見抜いて、責任者を決める人物眼も必要となります。また、増えた社員をまとめる能力や、それに耐え得る人格も求められます。

ビジネスモデル中心の創業期には気づきませんが、事業が拡大していくと、経営者が自らの人格を磨き上げていき、「リーダーとして、どうあるべきか」「社員をいかにたばねて、企業としての一体感をつくるか」ということは経営者にとって、大変重要な仕事になっていきます。

7人で創業して40年、グループ従業員5700人強へ

40年前に元同僚7人で創業した総合メディカルは現在、グループ従業員数で5700人を超える規模になっています。私自身、創業期にリスクを取って助けていただいた方々への感謝の気持ちは、いまでも強くあります。そして、「会社は預かり物である」という思いで創業以来、企業経営に努めてきました。

 

会社には、それぞれ誕生した理由や背景、創業時の精神があり、経営上で問題が起きた場合、その原点に立ち戻って、物事を判断して、行動していきます。当社では、クリーン・フェア・オープンの精神で臨んでいます。
マーケティングの基礎である『MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)』のうち、「会社は、何のために世の中にあるのか」というミッションが、もっとも大事だと考えます。ビジネスでよくいわれる、売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よしの中でも世間よしが最優先になります。

 当社では、損得だけでなく、人間としてどうあるべきか、社会的に正しいか、道徳を守っているかで考えています。社内的には、「正か・邪か」「善か・悪か」「みんなのため・社会全体のためになるか」という基準で5年後・10年後も見据えて判断してきました。

古典に学んだ企業経営の要諦

 子どもの頃、大人らが集まると、日常会話の中で古典の言葉がよく出ていました。われわれの世代は、そういう時代に生まれて、またそのような土地柄で育ったので、古典の言葉に自然と親しんできました。
会社経営で問題が起きた場合、私は問題の整理をするためにいろいろな古典を読み、答えになるような言葉に度々出会いました。古典の中には三千年以上もの歴史の中で生き続ける言葉もあり、現代にも通じる真理があります。

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九州大学起業部の集合写真

中でも「徳によって興り、徳に背いて亡ぶ」という言葉は、会社を経営する上で自らの指針としてきました。自分中心の考 え方でなく、周りの人々の立場も考えていく徳が大事になります。また、「倹によって栄え、 奢によって滅ぶ」というのも企業経営においては重要な教えです。
人間は全知全能の神と違ってブレてしまいます。人間は本来、動物であり、神になれませんが、なれないなりにリーダーは賢者であらねばなりません。
また、人を束ねるリーダー的な立場の人を君子と呼びます。

そうでない普通の人は小人とされます。その君子と小人の差は、志の差です。
「大器は人を求め、小器は物を求める」
という言葉がありますが、君子は、「世の中をこのようにしたい」「組織をこのように変えたい」という志をしっかり持っている人で、同じような志を持つ人間をいつも求めています。

創業して以来、個人的に一番うれしかったのは、会社10年目に社是・社訓をまとめたことです。10カ月掛かりで私がつくったのが、当社の社是・社訓です。
その社是・社訓を応接間に掲げていたところ、取引銀行の支店長がニコニコと笑顔で「良い社訓だ」と褒められたのが一番うれしかったですね。これまでの考え方や生き方が間違いないことを確信できました。また、社是・社訓に続いて作成した「わたしたちの誓い」は、大手証券会社の福岡支店長に気に入っていただき、その支店で使われています。このような価値観の響き合う方々との出会いは有り難いことだと感じています。

経営者は今後いかに生きるべきか

2011年にデューク大学のキャシー・デビッドソン教授が、「今年、アメリカの小学校に入学した子どもたちのうち、65%が大学卒業時、いま存在していない職業に就く」という予測を発表して、大きな話題を呼びました。たしかに情報革命が進む中で、私たちの働き方は大きく変わっていくわけなので、何となくわかるような気がします。

 

今後、社会構造が劇的に変わろうとしている中、いろいろな変化が起きていくでしょう。このような状況下、人生観や志の整理ができていない人は、結果的に自分の気分や都合、損得、有利・不利などの目先で日々、判断してしまいます。

しかし、志を持った人は、「一度しかない人生をどのように生きるべきか」を考えながら、しっかり生きていくことができます。
ビジネスを通じてたくさんのことを学び、人格を高めて、誰からも「また、会いたい」と思ってもらえるような存在になって、いずれはビジネスを越えて、社会に貢献していければと、私自身も思っています。

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小山田浩定福岡ベンチャークラブ会長・総合メディカル株式会社相談役

1940年9月29日に東京都で生まれて、1945年鹿児島県に疎開。その後、父の出身地である宮崎県で育つ。宮崎県立都城泉ヶ丘高校卒。三共に入社後、日医リース勤務を経て、1978年日本メディカル・リース(現総合メディカル)を元同僚と7人で創業して専務取締役に就く。1980年代表取締役専務、1990年同社長、2004年同会長、2012年取締役相談役を歴任して、2017年相談役。この間、2000年東証2部上場、2001年東証1部指定換え。2009年9月福岡ベンチャークラブ会長に就任。