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vol.52Pick Up Interview

手嶋 英津子西南女学院大学保健福祉学部栄養学科講師

「食育×ICT」を形にしていく
アップル認定の教育イノベーター

「Apple Distinguished Educator(以下、ADE)」をご存じだろうか。これは、アップルが認定する教育分野のイノベーターのことだ。
教育界を変革するための方法を模索している教育者として、また、世界中で意欲的に活躍しているリーダーとしてアップルが認定するこのプログラムに、今年7月、西南女学院大学保健福祉学部栄養学科講師の手嶋英津子氏が選ばれた。
福岡県で女性初、そして食育分野で初選出の手嶋氏に、ビズリード・フクオカが話を聞いた。

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「食育の授業ーおやつ編ー」。おやつを選ぶと、糖分や脂質が表示され、適正量もわかる。

アップルに評価された「食育アプリ」

ADE認定、おめでとうございます。認定までの経緯を教えていただけますか?

私の場合は、2016年9月に作った「食育アプリ」とそれを使った授業などの取り組みを評価していただきました。アプリのことが新聞で取り上げられたり、学会やSNSで取り組みを発信したりしているうちに、アップルから「ADEに応募してみませんか?」と声をかけていただいたんです。食育の分野に取り組んだのは、私が初めてだったそうで、そこを評価していただいたのだと思います。

「食育アプリ」とは、どのような内容ですか?

最初に作ったのは、「食育の授業-朝ごはん編-」です。目玉焼きやトーストなど、朝食用のメニューの画像が並んでいて、普段食べているものを選ぶと、栄養バランスを視覚的に確認することができます。
その後、2018年2月に第2弾として「おやつ編」をリリースしました。これは、本校の学生たちを中心に作ったもので、学生たちが載せるおやつを決め、カロリー計算をしたり撮影をしたりしました。
どちらのアプリも、子どもたちが望ましい食習慣を身に付けることを目的としたもの。また、学生がこれらを使って子どもたちに食育の授業をすることで、ICTを活用できる管理栄養士の養成も目指しています。

なぜアプリを作ろうと思ったのでしょうか。

4年前、西南女学院大学栄養学科の講師に着任した際、自分の研究課題として「食育」を掲げました。
食育について、どんなことをしていこうかと考えている時に、研修で文科省の方が「2020年代に向けて教育の情報化が推進される。これからは教育もICTの時代だ」と話されるのを聞いて、「食育のアプリを作ろう!」と思い立ったんです。そして、「作るなら、タブレットが広がる前に作るべきだ」と、アプリ開発ができる人に声をかけて、すぐ動き出しました。

制作の際に大事にした点や苦労したことがあれば教えてください。

大事にしたのは、視覚的にわかりやすく、子どもたちが感覚的に使えるようなものにすること。そして、学校の教材として使うため、インターネットにつながなくても使えるものにすることでした。

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アプリを使った授業の様子。「学生は、子どもに教える責任を感じて、しっかり準備していました」と手嶋氏。
大変だったのは、教育の現場からの理解をなかなか得られなかったこと。学生たちが、子どもに授業を行うところまでをこの取り組みの目的としていたので、小学校の協力は不可欠です。しかし、その頃はまだタブレット使った授業が一般的でなかったため、協力してくださる学校がなかなか見つからなくて…。でも、地域の食育イベントや学会発表などで実績を積むうちに、次第に小学校からも声がかかるようになりました。

実際、授業を行ってみて子どもたちの反応はいかがですか?

楽しく使ってくれているようです。授業の後のアンケートでは、「楽しかった!」という感想以外にも、「お菓子を減らします」「家でも使いたいです」といったコメントもありました。
とはいえ、授業は黒板やワークシートも使って行うので、アプリはあくまでも教材の一つに過ぎません。そういう点では、子どもたちは、このアプリを特別なものと捉えることなく使ってくれており、授業に溶け込んでいるように感じました。

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管理栄養士の地位向上にも意欲的な手嶋氏。「そのための委員会を、同じ大学出身の管理栄養士たちと立ち上げました。もっと管理栄養士が世の中のお役に立てるということも伝えていきたい」と語る。
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ADEに認定された証。選出されるには、教育現場での仕事に従事していること、iPadなどのAppleのデバイスやコンテンツを使った教育を実践していることが認定条件。

食にまつわる課題をICTを活用して解決したい

今回、オーストラリアで開催されたインスティテュートに参加したとのこと。いかがでしたか?

2年に1回、ADEに選ばれたメンバーが「インスティテュート」と呼ばれる大会に集まるのですが、そこではさまざまな最新テクノロジーが紹介されるんです。「食育の教材に活かしたら、子どもたちがもっと食に興味を持ってくれるんじゃないかな」と、思うものがたくさんありました。
アウトプットのパターンが広がったことで、帰国後、学生たちがやりたいことに対して、「これを活用してはどう?」と、新しい手法を教えられるようになりました。これらのテクノロジーを生かして、もっと食育に幅広いアプローチをしていきたいですね。

今後の展望を教えてください

「食育×ICT」だけでなく、これまでの経験で得た知識を使って、企業が抱える食に関するさまざまな問題の解決にも協力できればと思っています。今もすでに、食のイベントやレシピ・商品の開発など、いくつかの企業とコラボして、さまざまな企画が進行中なんですよ。
食は、身近なことである一方で、課題が多い分野でもあります。子どもの食や人生100年時代を支えるための食と健康、食品ロスといった環境問題など、未来に向けて考えていけることが、まだまだたくさんあるのではないでしょうか。
食に関する知識や解決策を求めている方は、ぜひ一度ご相談ください。一緒に良い方法を考えましょう。

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手嶋 英津子 てしま えつこ

西南女学院大学保健福祉学部栄養学科講師。
管理栄養士・Apple Distinguished Educator。
中村学園大学栄養科学部の助手として8年勤務後、食品関連会社で病院等の献立作成業務を経験。
2015年4月より現職。