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vol.43Special Interview

森田隼人氏シャボン玉石けん株式会社代表取締役社長

無添加せっけんのパイオニア企業として、
産学官連携を〝テコ〞に新たな地平を切り拓く

無添加せっけんのパイオニアメーカーであるシャボン玉石けん株式会社(北九州市若松区 森田隼人代表取締役社長)は、天然油脂をつかって昔ながらの製法で作る無添加せっけんにこだわったモノづくりに取り組んでいる。従来の固形せっけん、粉せっけんに加えて、産学官連携で得た知見を活かし、液体せっけんを開発、商品ラインナップを拡充する。そして、企業理念である「健康な体ときれいな水を守る」ことの実現に向けて全力で打ち込む。

「健康な体ときれいな水を守る」
モノづくりにこだわる

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天然油脂をつかって昔ながらの製法で無添加せっけんを作る

「健康な体ときれいな水を守る」を企業理念に掲げ、天然油脂を原料に昔ながらの製法でつくる、〝人にも環境にもやさしい〞無添加せっけんの製造・販売を手掛けています。

主に一般家庭向けに「顔を洗う」「髪を洗う」「洗濯をする」「歯を磨く」などに使う無添加のせっけんや歯磨き粉、洗浄剤をお届けしています。以前は固形せっけんと粉せっけんのみでしたが、産学官で取り組んだ消火剤の研究・開発での知見を活かした液体せっけんの商品化によって、商品ラインナップも広がりました。

モノづくりへのこだわりとして、口に入れても安全な品質のモノをつくっています。

たとえば、肌荒れの原因を体質だと思っていることも多いのですが、実は洗濯用洗剤やボディーソープなどが原因になっているケースも数多くあります。

そのようなときには、洗濯用や体洗い用の洗浄剤を是非見直していただきたい。当社の無添加せっけんは肌にやさしく、安心してお使いいただけます。

先代の父が信念で
切り拓いた「無添加せっけん」づくり

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シャボン玉石けんの主要な商品ラインナップ

当社は、1910年に祖父が創業。「森田範次郎商店」として日用品の販売を行っていました。当時、石炭景気でせっけんもよく売れたそうです。石炭景気が終わって、高度経済成長期を迎え、アメリカから合成洗剤が入って来ました。当社は一早く合成洗剤の製造・販売を手掛けて、業績を大幅に伸ばしました。またその頃、先代社長である父は体にできる赤い湿疹に悩まされていました。

ある時、国鉄から「合成洗剤で機関車を洗うと、錆びやすいので無添加の粉せっけんをつくってくれ」という依頼を受けました。開発した無添加せっけんを洗濯や体洗いに使うと、父の湿疹が治り、再び合成洗剤を使ったら、再発したので、湿疹の原因がわかりました。

当時、合成洗剤は大変売れていましたが、「悪いと分かったモノを売るわけにはいかない」と一大決心した父は合成洗剤をやめて、無添加せっけん一本に切り替えました。その結果、売り上げは100分の1以下、100人いた従業員も5人にまで減りました。

実に赤字経営が17年も続く中、父は『好信楽』(「好み、信じ、楽しむ」本居宣長)の精神で無添加せっけんの啓発と普及に取り組ましました。

そして、使命感をもって執筆した『自然流せっけん読本』が異例のベストセラーになり、無添加せっけんの良さが広く知られるようになって販売も伸びて事業として軌道に乗りました。

産学官連携での商品開発で商品と事業の領域が広がる

1995年に起きた阪神・淡路大震災の教訓として、少ない水で速く消せる消火剤が求められるようになりました。しかし、消火剤は合成製品しかなく、北九州市消防局による実証実験の結果、環境に負荷を与えることが分かりました。

北九州市は「世界の環境首都」を目指しており、北九州市消防局から当社に世界初の環境にやさしい消火剤の開発依頼がありました。その商品開発において、難問が山積したので、北九州市立大学にも参画していただき産学官で取り組み開始、2007年に世界で初めて環境性能を備えたせっけん系消火剤を世に送り出すことができました。

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せっけん系消火剤を用いた泥炭火災の消火風景

消火剤は建物火災だけでなく、世界的に頻発する森林火災にも有効です。また、地中で起きる泥炭火災が多いインドネシアでは、そのCO2排出量は日本の総排出量に匹敵するほど、大変深刻です。今後、国際問題に発展しかねないため、JAICAや現地の行政府などと一緒になって、せっけん系消火剤の普及に努めています。

消火剤の商品開発で大学と協働することで知見が深まり、当社の商品開発力も向上しました。また、同様に産学連携で開発したハンドソープは、従来の一般消費者向けに加え、病院や介護施設、食品工場などの業務向けにも広がっています。

誤った無添加を正しながら
無添加の本質を啓発していく

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年間で約1万5000 人が見学で訪れる本社工場

将来に向けた抱負として、一般家庭向けに当社の無添加せっけんをもっとお届けしたいという思いが強くあります。国内市場的にまだ十分な余地があり、また安心・安全への関心が高まり始めたアジアを中心とした海外にも広げていきたいと考えています。

現状、せっけんと合成洗剤の違いを十分に知っていただいていない面もあり、小売店の方々も含めて消費者のみなさまに伝えていきたいと思っています。中でも「無添加」という言葉については、我々としては正しいとは言えない情報が広がっています。石けん・化粧品分野で最初に「無添加」という表現を用いた当社では、石ケン素地と水以外何も入っていないモノを無添加としています。

しかし、現状、無添加という言葉が独り歩きして、いろいろ添加されていても特定の添加物が一つ入っていないだけで無添加と表示できてしまいます。我々としては無添加の本質をお伝えして、多くの方々に知っていただきたいと思います。

そして、肌にやさしいモノや環境にやさしいモノを使いたい方々にとっての常識になったら、嬉しいですね。当社では工場見学も行っておりますので、興味や関心がある方々は、ぜひ足を運んでいただきたいと思います。

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森田 隼人氏シャボン玉石けん株式会社代表取締役社長

11976年8月13日生、北九州市出身。専修大学経営学部経営学科卒。2000年4月シャボン玉石けん株式会社に入社。2001年取締役、2002 年取締役副社長を経て、2007年シャボン玉石けんおよびグループ3 社の代表取締役社長に就任。化学物質や合成添加物を一切含まない無添加せっけんを製造・販売する一方、人気商品の売り上げの1%を「人と環境にやさしい活動」に取り組む団体に寄付する活動を手掛ける。