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vol.47

福岡都市圏 主要8 大学の就職支援キーマンに訊く!

Bizread編集部
 2019就職・採用戦線 最新動向&見通し

売り手市場・短期決戦の様相がさらに強まるとみられる就職・採用戦線2019は、どのような展開になっていくのだろうか。福岡都市圏の主要8大学の就職支援キーマンへのインタビューを敢行した。

誰が就活日程を決めるのか!?

会社説明会などの広報活動は3月1日以降、面接などの選考活動は6月1日以降、内定日は10月1日以降――。2019年3月の卒業を見込む学生・院生らの就活スケジュールについて、日本経済団体連合会(経団連)は、前年の就活生と同じ日程で実施することを発表した。経団連では、「学生の企業研究の時間確保に課題があるとの指摘もあるが、大きな混乱は見られておらず、全体的には評価する声も多い」ことを理由とする。

毎年、経団連が発表する就活スケジュールのガイドライン(指針)は経団連会員企業だけに適用されると思われがちだが、当の経団連では、「政府は、経団連を含む約450の経済団体・業界団体に対し、経団連の指針に基づく活動開始時期の遵守や学事日程への配慮を要請している」と、すべての企業に秩序ある採用選考活動を求めている。

3年連続で同日程となる点について、大学の就職支援部署では、「2019年度も2018年度と同様に売り手市場が継続していくのではないかとみている」(福岡女子大学入試・広報・キャリア支援センターの氷室悦郎副センター長)との声が多い。

昨今、〝短期決戦〞〝売り手市場〞の就職・採用戦線が続く中、「中小企業を中心に企業側ではインターンシップも含めて、学生との接点を早く持ちたがっている」と西南学院大学キャリアセンター就職課の南里恵美課長は率直に語る。

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いざ出陣、2019年卒の就活生

就活戦線の主役である2019年3月の卒業組の学生は、どのような状況だろうか。

「今年と同様の売り手市場になっていくとみられる中、学生自身の危機感が薄れている」と、福岡大学就職・進路支援センターの服巻圭亮事務部長は指摘する。このような見方は多くの大学就職支援部署で共通しており、中村学園大学学生部就職支援課の岡本健人係長は、「就活に対する学生のゆるみが、なんとなく感じられる」と明かす。

「学生の緊張感の欠如に加え、採用活動の実質的な前倒しや短期化などで学生の準備が不足がちになっている」(筑紫女学園大学進路支援課の河本博史課長)との危惧も寄せられている。九州産業大学キャリア支援センター進路支援課の堀内公代課長によると、「就活のスタートが遅れてしまうと、就活自体が短期決戦なため、途中での挽回は難しい」。

これらの状況を踏まえ、大学の就職支援部署では、「学生に対して、全体としては売り手市場かもしれないが、規模や業種によっては相変わらず狭き門だと緊張感を促している」(福岡工業大学就職部の三澤礼一郎部長)という。

今後の就活戦線の見通しとしては、18歳人口の減少や人手不足などで売り手市場の状況が続くという見方が強い一方で、「このような状況が続くのも東京オリンピック開催の2020年までだと、いまから覚悟している」との見方もあった。

生々流転の新卒採用1世紀録

1872年7月14日付の『東京日日新聞』に掲載された乳母募集の新聞広告が日本初の求人広告とされて、『求人広告の日』という記念日になっている。

新卒一括採用の始まりは1895年、日本郵船と三井銀行による採用活動とされている。その後1928年に三井や三菱などの大手銀行が大学や文部省に働きかけて学生の定期採用は卒業後に行うという就職協定の原型も登場するなど、新卒一括採用が着実に定着していった。

戦時中の国家統制を経て戦後、新卒採用は復活したものの、大学紛争で学生自らが就職先を探す流れへと変化した。60年安保時に大学新聞広告社として誕生したリクルートは1962年、就職情報誌の先駆けとなる『企業への招待』(後のリクルートブック)を創刊した。一方、就活で定番の合同会社説明会は、1981年に学情が開催した『就職博』が日本初とされる。その後、就活市場は日本経済の発展とともに拡大していく。

バブル崩壊後に訪れた就職氷河期だった1997年に形骸化していた就職協定は廃止された。それ以降、冒頭の通り、経団連が大学との間で合意した採用日程を毎年、発表する形へと変わった。

デジタル・スマホ時代の就活戦線

1990年代半ばからインターネットの急速な普及で新卒採用は就職情報誌からウェブへと移行して、就活・採用のスタイル自体も大きく変わった。

大学就職課で掲示する求人票だけでなく、インターネット上の就職サイトなどを用いて情報収集する学生が一般的だ。さらにスマートフォンの普及でSNSなどを通じて企業の情報や評判も容易に入手できるため、就活でスマホは、必要不可欠なツールになっている。

この点について、「インターネットやメールが一般化し、スマホが当たり前のコンタクトツールとなって、学生〜企業間、学生〜大学間で連絡がしやすくなった」と評価する声も多い。

就活スケジュールの実質的な短期化によって、就活自体がスピード化している現状を踏まえ、「空き時間でも就活ができるようになった半面、すきま時間も就活をしないといけないという現実もある」という。デジタル・スマホ時代の就活はスピード重視の短期決戦であり、就活生の動きにも拍車が掛かる。

就活事情で織りなす光と影

デジタル・IT時代を迎えてのパソコンやスマホの普及は、必ずしも光の部分ばかりとは限らない。「日常ではスマホでのメールやLINEなどでのやり取りがほとんどのため、実際に電話をかけての会話が苦手な傾向がみられる」という。事実、社会人として働き始めた就職先で扱うのが従来使ったことのない固定電話であり、〝電話が怖い〞という者もいるそうだ。

「便利になり過ぎた分、従来常識だったことに欠ける面もみられる」という指摘もある。パソコンやスマホでの説明会やセミナーへの参加申し込みに簡単にできる半面、安易に欠席してしまうケースも少なくない。また、就職課に相談で訪ねた学生の中には、「エントリーシートを添削してほしい」と、エントリーシート自体でなく、スマホの画面を提示した者もいたという。

かつて紙ベースだった求人票もデジタルデータ化が進む中、「求人票を紙でもらうと企業の本気度を感じる。特に担当者が持参すると、格段に本気度が伝わってくる」(筑紫女学園大学進路支援課の河本博史課長)。

また、電子メールなどで伝達していた連絡について、福岡女学院大学進路就職課の世利優子課長が郵便に切り替えたところ、「ハガキによるリアルな連絡では、驚くほど反応が良かった」というのだ。社会のデジタル・IT化が進む一方で、フェイストゥーフェイスやハガキでの連絡などのリアルさも依然、説得力や訴求力があるといえる。

企業側での新たな採用動向

「選考スタイルが、かつての選抜形式から囲い込み型に変わってきている」との指摘通り、従来の学生からの応募を待つスタンスでは難しくなっている。「リクルーターの若手社員をはじめ、同窓の先輩社員が就活生をフォローするケースが目立つ」などリクルーター制度の復活をはじめ、攻めの動きもみられる。また、リクルーターらを介した面談スタイルによる選考やアドバイスにも力を入れる。

さらに若手社員との座談会や食事会などを通じて、社員との交流を図る機会も増えつつある。「近年、就職してからの離職率が問題視されており、これらの取り組みを通じて、就職先とのミスマッチが少なくなれば」と期待する向きもある。

一方、大学と企業との関係性にも変化がみられ、「企業の採用担当者は従来の就職サイトなどの媒体を用いた募集や合同会社説明会などのイベント参加から、原点回帰として、大学との関係強化の意図で大学を訪問する件数が増えている」という。

また、企業側の選考方法も進化している。学生の〝素〞をみようと、選考をイベント化していく動きもみられ、従来の面接やグループワークなどの選考だけではなく、応募した就活生を集めてのバーベキューや社員との合宿などで生身の姿を見ようとする向きもある。

また、選考手段として自己PR動画を送らせて、動画作成のセンスをくみ取ろうとする試みもみられる。

就活にも忍び寄るAIの影

昨今、売り手市場が過熱していく中で、大学の就職支援部署の担当者らが、危惧しているのはAI化の動きだ。

具体的な動向としては、大手銀行でのファインテックやAI化による一般職採用の大幅減が挙げられる。今後、地銀などの金融界全般に広がり、さらに各業界にも広がる可能性があるので各大学の就職支援担当者は、その動向に注目している。

一般企業でも採用面でAI化の動きは始まっており、「人気の大手有名企業では、膨大なエントリーシートをさばくためにAIを導入していると聞く。最近、エントリーシートによる選考結果をみて、疑問に感じる結果も目につくようになった」と、ある関係者は明かす。

デジタル・スマホ化の波に加えて、AI化という新たな波も到来して就職・採用戦線が大きく変わる可能性も秘めている。

就職先選びでの学生のホンネ

やりがい、仕事内容、勤務地、待遇、職場環境、職種、企業としての安定感、出会い・縁……。

学生が就職先を決める要因はさまざまだ。そうした中、あえて共通項を挙げると、さまざまな背景をもった個々の学生が総合的に考えた上での〝納得感〞が、就職先の判断要因といえる。

最近の学生は安定志向に加えて、趣味や余暇の充実も含めたワークライフバランスなどの福利厚生面を重視するため、大手企業志向が依然強いのも事実だ。その半面、「自分なりの価値観にもとづくやりがいや将来性、社会貢献なども考えて、無名の実力派企業を選ぶ学生も出始めるなど働き方や会社選びへの変化がみられる」(河本筑女大課長)

これらの動向を踏まえて、企業による学生向けの情報発信がより重要になっていく中、「企業と学生が接する機会を増やしていくことで、魅力的な中堅・中小企業の存在も知ってほしい。学生に対しては、生き生きと働いている若手社員らの姿を情報発信していくと、彼らにとって刺激になる」(堀内九産大課長)。

その一方で、半数の学生が奨学金を抱えながら就学している現実があり、「奨学金返済のため、待遇などの経済的な条件を重視しないといけない事情もある」と日々、学生の就職相談に向き合う担当者は明かす。

近年、親の納得感を得られないと、就活を継続する傾向もみられる。優秀な女子学生が東京本社の大手企業から総合職の内定を得たが、親の反対で就活を継続。親の意向をくんで実家から通える企業に就職を決めたという。「女性活躍の時代になっても真逆な現実がある」と就職支援の女性担当者は肩を落とす。

大学就職課からのメッセージ

毎年、就職・採用戦線が加熱していく中、各大学の就職支援 部署担当者に企業の採用部署への要望を尋ねると、「企業の中には3月、4月の段階で内定を出すところもあるが、経団連と取り決めている6月1日以降を順守してほしい」など、スケジュール面での要望が多かった。

また、選考そのものについても「学生の長所をいろいろな側面からみてほしい。大学のブランドよりも学生自身の資質に注目していただきたい」(服巻福岡大部長)や「最初から優秀な学生はいません。大学では、社会人となる下地作りに懸命に取り組んでおり、企業には、ポテンシャル採用を経て、原石をみがいて、戦力として育ててほしい」(三澤福工大部長)などの声が寄せられた。

そして、選考結果に関しても「採用の可否に関する要因をフィードバックしてもらえると、個々の面接で具体的な指導ができるので本当にありがたい」(世利福女学院大課長)など、面接に関する要望も目立った。

その一方で、保証人付の内定承諾書の提出をはじめ就職活動を終了の方向へ仕向けて圧力をかける、いわゆるオワハラも問題視され始めている。「人材を確保したいという気持ちは分かららないわけではないが、このようなことをやっていると、企業のイメージが悪化する恐れがある」(氷室福女大学副センター長)との危惧もある。

今日、就活生はスマホなどでSNSを使って企業の情報や評判を手に入れることが多い。学生自身もブラック企業的な就職先は避ける傾向が強いだけにSNSなどで悪い評判が広がると、学生は真実を確かめないままに応募を辞めてしまいがちだ。スマホ・デジタル時代の就職・採用戦線では、風評対策も含めて取り組む必要がある。

就活が学生の成長機会になる!?

3月1日以降、大学のキャンパス内においてもリクルートスーツ姿の就活生が目立ってくる。「就職活動を通して学生も成長している。特に3月に入り多くの社会人に出会うことで言葉遣いや立ち振る舞いなどにも変化がみられ、彼らの成長を実感する。彼らがさらに成長できるように企業からも助言してほしい」(南里西南大課長)とする。

就活に関しては、新卒採用に向けた就職活動という面以外に教育的な側面もある。「面接を受けた企業の担当者からの言葉は学生にとって大きい。企業担当者からの言葉によって、学生のモチベーションも上がり、主体性も養われていくので、採用活動では学生を育っていくという配慮もほしい」(岡本中村大係長)という意見もあった。

3月1日から本格的にスタートする就職・採用戦線2019が、就活に励む学生、人材獲得を担う企業担当者、各大学の就職支援担当者にとって、実り多いシーズンになることを願う。

西南学院大学

〒814-8511
福岡市早良区西新6-2-92
TEL 092-823-3296
http://www.seinan-gu.ac.jp/

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南里恵美氏

西南学院大学キャリアセンター就職課課長

福岡大学

〒814-0180
福岡市城南区七隈8-19-1
TEL 092-871-6631
http://www.fukuoka-u.ac.jp/

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服巻圭亮氏

福岡大学就職・進路支援センター事務部長

九州産業大学

〒813-8503
福岡市東区松香台2-3-1
TEL 092-673-5555
http://www.kyusan-u.ac.jp/

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堀内公代氏

九州産業大学キャリア支援センター進路支援課課長

中村学園大学

〒814-0198
福岡市城南区別府5-7-1
TEL 092-851-2531
http://www.nakamura-u.ac.jp

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岡本健人氏

中村学園大学学生部就職支援課係長

福岡工業大学

〒811-0295
福岡市東区和白東3-30-1
TEL 092-606-0672
http://www.fit.ac.jp/

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三澤礼一郎氏

福岡工業大学就職部部長

福岡女子大学

〒813-8529
福岡市東区香住ケ丘1-1-1
TEL 092-661-2411
http://www.fwu.ac.jp/

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氷室悦郎氏

福岡女子大学入試・広報・キャリア支援センター副センター長

福岡女学院大学

〒811-1313
福岡市南区曰佐 3-42-1
TEL 092-575-2477
http://www.fukujo.ac.jp/

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世利優子氏

福岡女学院大学進路就職課課長

筑紫女学園大学

〒818-0192
福岡県太宰府市石坂2-12-1
TEL 092-925-3511
http://www.chikushi.ac.jp/

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三澤礼一郎氏

福岡工業大学就職部部長