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vol.44REPORT

福祉分野を行くBizread特別企画

新たなマーケットになり得るのか!?日本における福祉分野のあらましと今後の展望

福祉、介護、医療、年金、社会福祉……。これらの言葉は普段よく耳にしながらも、意外と内容や実態を把握していないことが多い。今日の少子高齢化や規制緩和の潮流で、〝福祉ビジネス〞として注目されることもある福祉分野においては、どのような事業内容や事業規模、職種などがあるのだろうか。社会保障制度をヒモ解きながら、日本における福祉分野の現状と今後の展望や可能性について考えてみる。

福祉・社会福祉とは一体何か

福祉とは。一体何なのか?
この問いに対して、いろいろな視点や切り口などからのアプローチがある。そうした中、これまでの議論や考え方、意見などを集約していくと、「福祉とは、《人々は、すべて幸福でなければならない》という理念が根底にあるといえる。

その背景としては、日本国憲法第25条で明文化された「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と、条文で謳った社会的使命としての存在感が大きいといえる。

一方、憲法の条文でも取り上げられた社会福祉については、どうだろうか?

1950年に社会保障制度委員会が、「社会福祉とは、国家扶助の適応を受けている者、身体障害者、児童、その他援護育成を要するものが、自立してその能力を発揮できるよう、必要な生活指導、更正指導、その他援護育成を行うこと(『社会保障制度に関する勧告』)と提議している。

今日、日本における社会保障制度は、この考え方をベースにして、システムを構築してきた歴史がある。

社会保険・社会福祉・公的扶助・公衆衛生医療による社会保障制度

日々、人々は自己の責任と努力で、それぞれの生活を営んでいる。しかし、病気やケガ、老齢、障がい、失業など自分の努力だけで解決できず、相互に助け合っても支え切れずに生活が困窮した場合、〝救いの手〞を差し伸べるセーフティネットの仕組みが社会保障制度だ。

日本の社会保障制度は、『社会保険』『社会福祉』『公的扶助』『公衆衛生及び医療』の4つを大きな柱としている。これらについて、具体的な内容をみてみると、次のようになる。

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【社会保険】

医療保険・年金保険・労災保険・雇用保険・介護保険の5つの強制加入保険で構成する。その財源は保険料と公費(税金)からなる。

【社会福祉】

老人福祉・障がい者福祉・児童福祉・母子福祉・公費負担医療など、社会生活での弱者や障がい者らを援助するシステムである。

【公的扶助】

生活に困窮する人に対して、国が最低限の生活保障をして、自立を助けるシステム。主に生活保護となる。

【公衆衛生及び医療】

健康な生活を過ごすために感染症対策・食品衛生・水道・廃棄物処理を行い、さらに外因病や生活習慣病の予防や早期発見を目指すシステムだ。

社会保障給付費112兆円、
英米を上回る日本の社会支出

社会保険をはじめ、社会福祉や公的扶助、公衆衛生及び医療で構成する社会保障制度の支出である社会保障給付費(ILO基準)の総額は112兆1020億円(国立社会保障・人口問題研究所『社会保障費用統計』2014年度版)にもおよぶ。

この数字は日本で1年間に生み出された富の総額である国内総生産(GDP)の実に23・87%に相当する規模だ。

一方、このような社会支出のGDPに占める割合を主要国と比較してみると、日本はフランス(2013年度31・7%)、スウェーデン(同27・8%)、ドイツ(同26・3%)におよばないものの、イギリス(同23・1%)、アメリカ(同19・0%)を上回る水準となっている。

年金54兆円、医療36兆円、福祉その他
21兆円の社会支出規模

2014年度時点で112兆円余りにも上る日本の社会保障給付費は、大きく『医療』『年金』『福祉その他』の3部門で構成される。社会保障給付費のうち、54兆3429億円(構成比48・5%)は年金部門での支出だ。これに36兆3357億円(同32・4%)の医療部門が続き、そして、福祉その他部門21兆4234億円(同19・1% ) となっている。なお、福祉その他部門においては、介護対策が9兆1896億円(同8・2%)であり、非介護対策費が12兆2338億円(同10・9%)の割合だ。

ちなみに社会保障給付費の財源は2014年度の場合、社会保険料( 65兆1513億円:国民負担)、公費負担( 44兆8373億円:税金)、基金運用など他収入( 30兆6130億円)で総額127兆2952億円だった。

福祉分野での職種や主体は何か

福祉分野における具体的な仕事の内容としては、『医療福祉』部門での看護師・薬剤師、『介護福祉』部門でのホームヘルパー・ケアワーカー、『社会福祉』部門での相談員・生活指導員などの職種が挙げられる。

そして、彼らが働く職場である特別養護老人ホームや障害者施設、保育園などの福祉施設は、全国に約16万カ所を数える。これらの施設の約半分近い運営主体が、社会福祉法人だ。

福祉を担う公共性の高い法人として位置づけられている社会福祉法人は、利益を目的にしない非営利団体として、補助金や非課税などの面で優遇されている。

厚生労働省大臣官房統計情報部「社会福祉行政業務報告」によると、全国に1万9823法人がある(2015年3月末時点)。一方、福岡市内の社会福祉法人数は福岡市保健福祉局調べで101法人(2017年3月10日時点)となっている。

萌芽し始めた福祉ビジネスの可能性

福祉分野は今後、少子高齢化による対象者の増加、国の規制緩和に伴う官から民への潮流を受けて、営利法人などの参入促進などで〝福祉ビジネス〞面でも活性化すると見込まれている。

一方、従来大きな担い手である社会福祉法人も2016年3月の法改正でガバナンス強化や事業運営の透明性が求められる一方、変化の兆しも見られる。

事実、福岡市内の社会福祉法人の中には民間企業とのタイアップによる商品開発やイベント開催なども手掛けているところもある。今後目が離せない業界の一つが福祉分野だといえる。