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vol.42Special Interview

北橋健治氏北九州市長

ものづくりや環境政策とともに、介護ロボットで課題解決に挑む

環境モデル都市、海外水ビジネス、環境未来都市・グリーンアジア国際戦略総合特区のダブル認定、世界遺産登録、国家戦略特区、G7エネルギー大臣会合……。北九州市は最近10年間で大きくステップアップした観がある。今年、市長就任10年を迎えた北橋健治・北九州市長にこれまでの振り返り、今後の展望や構想などを聞いた。

子育て環境で日本一の評価

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カンボジア・プノンペン都との姉妹都市協定締結式(2016 年3 月)

諸先輩から継承した北九州市の強みや魅力をさらに発展させていく一方、負のイメージや課題は乗り越えていく――。北九州市長に就任して以来、このような思いで取り組んでいます。

たとえば、子育て環境は就任時から政令市でもトップクラスの高い評価を得ていました。その成果を生かして前進させるために、まず実行したのが全国に先駆けての放課後児童クラブの全児童化です。そして、要望が多かった中学校の完全給食を実施し、いま小・中学校へのエアコン設置を進めています。

このような教育委員会と共同での取り組みの一つが、「子どもひまわり学習塾」です。放課後、ボランティア講師から勉強の仕方や面白味を学ぶ場です。そして、自治体としては全国で初めて、「子ども食堂」を開設しました。NPO法人のランキング調査では、政令市20都市の中で子育て環境で日本一との評価を得ています。

さらに、子どもたちが大人になった時の就職支援にも力を入れています。若者が就職で首都圏や他都市へ出て行く傾向が昔からあり、北九州市は1980年以降、人口減が続いています。このため、地元での就職機会を増やすのは当然ですが、さらに地元の良さや魅力を次世代に伝えることも必要です。

魅力的な地元企業や北九州の魅力を高校生や大学生、進路指導の先生、さらに父兄にも体感していただくイベントが、「北九州ゆめみらいワーク」で、広い意味でキャリア学習になる内容です。

「まちづくりは人づくり」

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山本幸三地方創生担当大臣による先進的介護実証現場の視察

私自身、「まちづくりは人づくり」と考えています。2008年に『元気発進!北九州』プラン(北九州市基本構想・基本計画)を策定しましたが、プランでは、子育て支援や就業支援とともに女性活躍にも力を入れています。出産や育児で仕事を離れていた女性の就職やキャリアアップ、子育て両立、創業などの支援窓口として、「ウーマンワークカフェ北九州」を開設しました。国・県・市の枠を超えて、ワンストップで対応するのは全国で初めてです。

同じく全国初の取り組みとして、シニアハローワークが挙げられます。いまのハローワークでは求人年齢を書けないため、「50歳以上の方向けの仕事」と表記できる特例をつくってもらいました。首都圏からのアクティブシニアのUターンも踏まえて、地方創生の目玉の一つです。

この10年間、子育てや教育、就職、創業などの支援を通じて、広義の人づくりに努めています。

環境技術の国際化でも先頭走者

北九州市の強みを発展させて、負の課題を乗り越えてきた象徴的な事例は、公害問題を克服した環境技術です。北九州市は環境分野において全国で先駆的に取り組んだ結果、国から環境モデル都市と環境未来都市に選定されています。

さらにOECD(経済協力開発機構)からもグリーン成長のモデル都市に選ばれています。世界で選ばれたのはパリ、シカゴ、ストックホルム、北九州市の4都市でした。権威のある国際機関からの政策評価を大変嬉しく思います。

世界の環境首都として、国際貢献・国際交流を進めています。北九州市は、カンボジア・プノンペン都やベトナム・ハイフォン市への水道事業の技術協力に取り組み、姉妹都市協定に至っています。インドネシア・スラバヤ市とは環境技術の協力が実を結んで環境姉妹都市となりました。

アジア各地への展開で、フレンドリーなネットワークが生まれ、環境技術が新たなビジネスの芽となっています。日本の各都市にとっての新たな道を示せるように、今後もトップランナーとして走り続けていきます。

介護ロボットで国を動かす

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北九州市の工場夜景

北九州市には国際的な環境政策に加えてモノづくりの伝統があり、今回の国家戦略特区でもこの点が評価されました。介護ロボット分野ではモノづくりの伝統を生かし、介護ロボット産業の集積・発展を期待しています。

介護ロボットの導入背景として、介護分野での人手不足が挙げられます。さらに作業の一部が重労働です。これらの業務の一部をロボットに代行できると、介護分野での人材確保や発展にもつながります。

このため、北九州市の技術で課題を乗り越えていくための実証作業も始まっており、介護職員の作業データを収集・分析中です。これは全国で初めての試みで、いわば介護作業の負担の「見える化」ともいえます。

将来的には、日本の介護保険制度に介護ロボットを位置付けたいと考えています。今後の介護保険事業計画にも反映させることで、国を動かしていく大変重要な事業です。

逆転の発想で課題解決先進地域へ

北九州市は高齢化が進んでいますが、高齢化は今後、日本全体の課題です。いま若い人が多い中国やベトナムでも将来的に高齢化して、介護が社会問題や政策課題になります。

一般的に高齢化はピンチだと言われ、若い人が減って地域の活力が弱まるとマイナス面で語られます。しかし、私たちはピンチをチャンスにできると考えます。日本だけでなく、世界中が今後、高齢化の対応に切迫する中、課題先進地域とポジティブにとらえて、介護ロボットなどにチャレンジし、新たな地平を切り開いていきたいと思い描いています。

北九州市の強みと魅力を活かす

他都市に無い北九州市の強みとして、24時間使える海上空港が挙げられます。国際貨物便も含めて将来的に北九州空港がアジアと日本を結ぶ玄関口の一つになるというポテンシャルがあります。

北九州市は、ものづくりのイメージが強いと思いますが、その特色を生かした産業観光では日本の都市で最も恵まれています。今後は、ものづくりや環境政策、介護ロボットなどと並んで、観光やインバウンドを政策の大きな柱に位置付けてアクセルを踏み込んでいきます。

日本はもとより、世界中から人が集まって、快適な空間や時間を過ごして消費活動をすることで、地域は大きく変わり、そして大いに潤います。観光都市として進化する北九州市にご期待ください。

北九州市の歴史

(1963~2016)
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北橋健治氏北九州市長

1953年3月19日生、東京大学法学部卒。1986年7月衆議院議員に初当選、1994年5月大蔵政務次官、1996年12月運輸委員会筆頭理事、1998年8月衆議院環境委員長、1999年11月大蔵委員会筆頭理事、2005年11月地方制度調査会委員、2006年3月行政改革特別委員会筆頭理事などを歴任して、2007年2月北九州市長に初当選、2011年2月に再選、2015年2月に三選。好きな言葉は「一日生涯」「釣月耕雲」。好きなスポーツはサッカー、草野球。好きな食べ物はカレーうどん、ハンバーガー、あじの干物、芋焼酎。好きなカラオケは「とんぼ」「吉田松陰」「浪速恋しぐれ」。自分自身のこだわりとして、映画ドラマ、ガーデニング、邪馬台国探索(北九州説)を挙げる。