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vol.42Bizread REPORT

企業経営者・人事担当者 必見!福岡都市圏の主要9大学就職支援キーマンに訊く!

来期就職戦線の展望&就活生〝気質〟の傾向と対策【後編】

来期2018年4月入社組の採用活動は一体どうなるのか!?福岡都市圏の主要9大学で就職支援を担当するキーマンを取材した。

優秀な人材を採れない真の理由

いよいよ2018年3月卒業組の就職戦線の火ぶたが切って落とされる。その主力となる大学3年生らは1994年頃に生まれた。2000年前後に小学校へ上がった彼らは入学と同時にゆとり教育を受けた。その後、リーマンショックを中学時代に経験した彼らの高校在籍時に起きたのが東日本大震災だった。

そんな彼らについては、「まじめ」「素直」「勉強熱心」「おとなしい」との評価が多い。「素直で勉強を頑張る真面目な学生が多い」とする福岡女子大学の氷室悦郎副センター長は、「生活環境が違うので私たちの世代と簡単に比較できないが、積極性や情熱面などで物足りなさを感じることもある」と率直に語る。

バブル崩壊後の四半世紀で大学生を取り巻く環境も一変した。この点を踏まえて、九州大学の割石博之副センター長は、「若者の幸福感が変化した。かつて若者はチャンスがあれば、可能性を信じて果敢に挑戦していた。今日では、身近なつながりを大切にしがちだ」とみる。

彼らが生まれた時点で既にインターネットが存在しており、「『ゆとり世代』というよりも『LINE・SNS世代』ではないか。ただし、コミュニケーションがうまくいかないと、自然とフェイドアウトする傾向がある」と、西南学院大学の南里恵美課長は感じる。同じく福岡大学の能野知学事務部長も「いまの学生にとって、SNSが身近なため、他人、特に同年代に気を使い、上下に薄い」とみる。もっとも、中には、「最近の大学生は大人しくなっている」との指摘もあった。

現状、地場中小企業を中心に採用難が企業の悩みになっている一方で、「自社採用レベルに達した優秀な人材が少なく、採用面で苦労している」という声も聞こえた。この点について、「AO入試や推薦入試が増加して、厳しい受験を経験していない学生が増えたのも一つの要因」という採用関係者の分析もある。

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割石博之氏

九州大学基幹教育院附属学生支援センター副センター長・教授

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氷室悦郎氏

福岡女子大学入試・広報・キャリア支援センター副センター長

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能野知学氏

福岡大学就職・進路支援センター事務部長

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南里恵美氏

西南学院大学キャリアセンター 就職課課長

地元志向は、いまや実家志向!?

 20世紀の『就職活動』時代から地元志向・安定志向はあったものの、近年は、より顕著になった観もある。「地元志向に加えて、身の丈に合った就活をする傾向がある」と、福岡女学院大学の世利優子課長も感じる。

昨今の大学生は、インターネットを用いた情報収集に長ける半面、「先輩が就職している会社を就活で探そうとする傾向がみられる。直接、情報を仕入れて心づもりにしようとしているのではないか」と、中村学園大学の緒方圭子課長は考える。

 もっとも、近年高まる地元志向について、「むしろ実家志向ではないかと感じる。実家から通勤したがる大学生、子どもを実家から出したくない親が共に増えている」という見方もあった。

また、昨今のブラック企業や過労死報道の影響もあって、「男女に関わりなく、ワークライフバランスの取り組みが、会社選びの重要な要素になっている。特に女性の場合、結婚しても働けるのか、子育てと仕事との両立への関心が高い」(福岡女子大学の氷室悦郎副センター長)。

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世利優子氏

福岡女学院大学進路就職課キャリア開発教育センター課長

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緒方圭子氏

中村学園大学学生部就職支援課課長

授業の多様化で変わる大学教育

 21世紀においては大学教育も大きく進化している。従来の座学に加えて、新たに※PBLや各種ワークショップも登場して多様化している。「2011年からキャリア教育に力を入れており、PBLやインターンシップ、さらに大半の学生が受講するキャリア形成の授業と連携して取り組んでいる」と、九州産業大学の堀内公代課長は解説する。

今日、PBLやインターンシップなどの取り組みは、各大学の教育現場で広がりをみせる。「大学が〝知の宝庫〞である点を踏まえて、企業向けの問題解決型インターンシップに取り組んでいる。また、海外インターンシップも5年前から手掛ける」(福岡大学の能野知学事務部長)。今日、大学教育は多様化しており、「《どのように社会と関わっていくか》という自分の基軸づくりでは正課教育に加えて、学外でのボランティア活動やPBLなどの課外教育も重要だ」(筑紫女学園大学の河本博史課長)と位置づけている。

これらに加えて、旧来の平等主義ではなく、集中と選択による一点突破を図って周囲を巻き込みながら、全面展開を図る動きもある。中村学園大学では、「5年前から大学生20名限定の『就職特別塾』を開講している。塾生が就活のお手本となることで、みんなを引っ張っていく」仕組みづくりをしている。

一連の就活において、大学生が最終的な就職先を決める上での相談相手として、友人や先輩・知人、就職支援部署を大きく上回る存在が、〝親〞だ。

就活のキーマンとなる保護者向けの就職説明会を開催する大学も多い。福岡工業大学の三澤礼一郎事務次長兼課長によると、「学生〜保護者〜教職員との三位一体で取り組んでいる。今日の就職活動は、いわば〝スマホ就活〞であり、保護者の経験とはまったく違う。このため、説明会では保護者からの疑問や不安の解消に努めている」というのだ。

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堀内公代氏

九州産業大学キャリア支援センター 進路支援課課長

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河本博史氏

筑紫女学園大学進路支援課課長

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三澤礼一郎氏

福岡工業大学学生部 就職課事務次長兼課長

大学生の心に響く企業PR法

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 2018年の就職戦線では、「就活期間が短いために大学生は安定志向・大手志向になり、名の通った企業を選びがち」との見方は、ほぼ共通する。このため、中小企業やB toB企業(法人向け取引企業)は、知名度不足で不利になる面は否めない。

 「中小企業やB toB企業はインターンシップを積極的に実施してほしい。そして、入社後の社員教育制度や女性が働きやすい職場環境づくりの情報を発信していくことが重要になる」(九州産業大学の堀内公代課長)。

具体的な手法としては、「業界を俯瞰した上で自社の立ち位置や長所を語り、さらに社員として働き甲斐をアピールすること。また、近年増えている《人の役に立ちたい》という欲求をもった学生層には、企業のCSR活動が自己肯定感を促すことになり心に響く」(筑紫女学園大学の河本博史課長)というのだ。

昨今の採用難で、かつて強いPR力を誇ったウェブ媒体にも効果減退の傾向が出ている現実を踏まえ、「インターンシップに力を入れる企業が増えている。さらに大手ではリクルーター制度を重視する企業も多く、広く浅い採用活動よりも学生個々に深く踏み込んだアナログへの回帰現象もみられる」(メディア総研の田中浩二代表取締役)。

就活にもグローバル化の影響!?

昨今、大学の教育現場にもグローバル化の荒波が押し寄せている。「海外の留学先から帰国して来る大学生もおり、配慮してほしい。また、教育実習に参加する大学生も多く、彼らについても考慮していただきたい」(西南学院大学の南里恵美課長)という声も上がっている。

福岡県の留学生数は東京都に次いで全国2位であり、「福岡県内での就職を希望する留学生も増えているが、現実的には厳しい状況にある。留学生採用には必要な手続きなどもあるが、優秀な学生も多いので、ぜひ検討していただきたい」(福岡女子大学の氷室悦郎副センター長)。

また、最近注目される早期離職問題に関して、「入社前と入社後のギャップが離職の要因になる。会社説明では自社の魅力や強みだけでなく、課題や仕事の厳しさも語ってほしい」(福岡工業大学の三澤礼一郎事務次長兼課長)との要望も出ている。

就活が導く〝教育の産学連携〞

いま、時代の大きなうねりで大学と企業が歩み寄りつつある中、「企業と更に踏み込んだ情報共有ができたらと思う。企業から受験した大学生や大学に対し、その評価結果をフィードバックしてもらえたら、新たな気づきや成長につながる」(福岡女学院大学の世利優子課長)と考える。

さらには、「大学での知的な成長プロセスに企業の人材育成プロセスを取り入れていく〝教育の産学連携〞が重要と考える。企業、大学、大学生の〝サロン〞づくり、を実現したい」(九州大学の割石博之副センター長)との構想も動き出している。

2018年就職戦線では関係者らの活躍と尽力に期待しながら、就活に取り組む大学生の希望が成就することを祈りたい。