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vol.49緊急インタビュー

皆川 博伸株式会社STU代表取締役

迷惑客から社員を守る
社員に学ばせたい3時間で身につく護身術

データによると、鉄道係員に対する暴力は1日2件のペースで行われ、病院の院内暴力は½の病院で起こっているという。我々が職場や日常生活を送る病院や飲食店、駅などが、いつ何時、暴力の現場と変化するのかわからないもの。いざという時、社員や顧客が被害者とならないために、社員が身を守る術を習得する機会を提供することは、今や経営者にとって必要なことなのかも知れない。
医療や接客業従事者を中心に護身術を指導している、株式会社STUの代表である皆川博伸さんに、ビジネスシーンでの護身術の大切さについて伺った
(文=市田里実)

社員に学ばせたい3時間で身につく護身術

ここ数年、暴力に関するニュースをよく見かける気がします。実際に増えているのでしょうか。

暴力事件が以前より増えているというよりも、顕在化しやすくなった、と考えるべきでしょう。以前であれば穏便に済ませようとしてあまり表に出てこなかった事件も、企業が暴力事件として認識し、警察へ届けるケースが増えています。
お客様相手の商売の中でも、特に医療関係や接客業などは、暴力被害に遭いやすいジャンルと言えます。昔から日本にある「お客様=神様」という考え方に加え、「待たされる」「注文が違う」など、自分の思い通りにならないストレスが加わると、暴力に訴える人も出てくるようですね。

なぜ護身術を教えようと思ったのですか。

暴力事件の被害者となるのは、女性や新入社員など弱い立場の方がほとんどです。
例えば、看護師さんなどは、一生懸命勉強し、資格を取得し、仕事についたとしても、事件の被害者になったことがトラウマとなり、キャリアを諦めてしまう人もいます。ご本人がショックを受けることはもちろんですが、採用した企業にとっても、社会にとっても大きな損失です。護身術の知識があれば、被害者となる可能性を大幅に減らすことができます。このような理不尽な暴力による離職者をなくしたいという想いから、企業を対象にした護身術セミナーを始めました。
企業によっては、暴力事件に対応したマニュアルはあるけれど、実際起きたときにどう対処したらいいかわからないという方がほとんどではないでしょうか。人間は、自分が体験したことのない恐怖へ対応することができません。だからこそ、事前に、いざという時どう対処すべきか、どう動いたらいいかを体験しておくことが大切なんです。

セミナーの内容を教えてください。

私がセミナーで教えているのは、突然の暴力事件に遭遇した場合、初動の60秒間自分の身を守る護身術です。
病院や飲食店などで起こる暴力事件は、必ず周囲に他の社員がおり、ある程度の時間が稼げれば助けがきます。ですので、助けが来るまでの60秒間は反撃をするのではなく、怪我をしないように確実な防御と距離を取ることが大切です。
セミナーでお伝えしている方法は、FBIなどでも採用されているものです。また、社員の方々はもちろん、お客様が襲われた時、安全に助ける方法もお伝えしています。

力や体力がなくても、身につくものでしょうか。

もちろん、大丈夫です。受講者のほとんどが、女性や力や体力に自信のない方です。セミナーは3時間程度ですが、どれもとてもシンプルで簡単です。もちろん、できるまで繰り返し練習もします。ですので、ほとんどの方が、3時間後には身につけることができていますよ。
また、確実に使えるようになって欲しいという想いから「できるまで保証」をつけさせていただいております。弊社の別のセミナーに参加していただき、復習することも可能です。

最後に、読者に一言いただけますか。

今の時代、いつ、何が起こるかわかりません。護身術が社員の皆さんを守るのはもちろん、現場にいる同僚やお客様を守ることもできます。知っているのと知らないのでは、いざという時の行動が違ってきます。ぜひ御社の社員のため、お客様のため、護身術セミナーを取り入れていただければ幸いです。

護身術セミナーの基本的な流れ

※お客様の業態にあわせて内容はカスタマイズいたします

座学

毅然とした態度を
貫くための基礎知識

  • 暴力行為の背景にあるもの
  • 脅しのパターンとその意味
  • 必要以上にビビらない方法
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実技

自分の身を護る
簡単護身術

  • 安全な距離の保ち方
  • 殴られたときの防御方法
  • 掴まれたときの防御方法
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実技

駆け付け救護法
トラブル仲裁法

  • 同僚を助ける場合の救護法
  • お客様同士のトラブル仲裁法
  • 泥酔者等への安全な対応方法
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暴力・迷惑行為を許さない環境づくりのお手伝い

対応マニュアル

  • 暴力行為の背景にあるもの
  • 脅しのパターンとその意味

防犯設備の検証

  • 防犯設備の運用アドバイス
  • 防犯設備の設計・販売・施工

予防啓発

  • 暴力行為の予防啓発
  • 啓発広報物の製作

緊急インタビュー
皆川博伸×内田幸雄

身を守り危機を脱する対処とは?

6月9日、東京発大阪行きの東海道新幹線の中で起きた無差別乗客殺傷事件。この衝撃的な事件を受け、弊誌発行人内田が 株式会社STU皆川博伸氏にいざという時の心構えや身を守る術について伺った。

内田

先行きの見えない変化の時代だからなのか、不平や不安で心が不安定になっている人が増え、このような事件が頻発していると僕は考えています。皆川先生は、この事件をどのように見ていますか?

皆川

まずは、お亡くなりになられた梅田耕太郎さんの勇気ある行動に敬意を表すると同時に、ご冥福をお祈りしたいと思います。梅田さんのお陰で多くの命が救われました。ですが、『サバイバーズ・ギルト』といって生き残った人が亡くなった人に対し「助けられなかった」「自分のせいで亡くなってしまった」など、罪悪感を感じてしまうことがあります。梅田さんのご家族のためにも、ほかの乗客の方のためにも、生きていて欲しかったというのが、僕の正直な気持ちです。
今回、車内アナウンスで新幹線のシートを外し、それを盾にして逃げるよう乗客に伝えたそうですね。これは素晴らしいことだと思います。事前に研修で行っていたことが役に立ったとのことですが、緊急事態の場合どのように行動すべきか、知っておくこと、訓練しておくことが大切です。また、僕が「まず逃げろ」というのは体験を通じて、危険性を正しく知っているからです。僕と皆さんの違いは「逃げきれないと判断するタイミング」と「最悪の事態を避ける防御法」を知っているかどうかだけなんです。

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何よりも「逃げること」「自分の身を守ること」の大切さを語る皆川氏。

内田

今回、まず狙われたのは女性でした。このような場合、力のない女性が、最初に狙われてしまいます。経営者や現場の責任者はどうしたらいいのでしょうか。

皆川

日本は平和であると考えられています。ですので、各企業において、クレーム対応や接遇の研修などは企画されますが、緊急時の対応についてはほぼされていないと言っても過言ではないでしょう。ですが、今こそ緊急事態に対する対応に力を入れるべきだと僕は考えます。

内田

私も営業マン時代に、突然大声で怒鳴られたり、胸ぐらを掴まれたり、危ない思いをしたことがありました。

皆川

営業マンなど、人と多く接する職種の方は、暴力の被害者になる可能性が高いもの。だからこそ、どうやって暴力事件が起こるか、その流れをまず知っておくことが大切です。
暴力事件は大きく分けると、いわゆる脅しや揉め事など前段がある場合と、今回の事件のように前触れがなく突然起るものの2種類があります。突然起きてしまう事件に関しては、防ぎようがありませんが、最初に挙げた『前段がある暴力』はどのように起こるか知っておけば、冷静に対処ができます。

内田

よかったら詳しく教えていただけますか?

皆川

まず最初に、怒鳴ったり、叩いたり、大きな音を出し、相手を脅します。これは、相手がどのような反応をするか見るために行います。この時に、ビビってしまうと暴力へと繋がります。ですので、毅然な態度をとることがとても大切です。
その次に、胸ぐらを掴むなど、具体的行動に出ます。この時、相手と自分の間に十分な距離をとってください。距離さえあれば逃げることも、相手を抑えることもできます。

内田

なるほど。相手の行動パターンを知っておけば、冷静に行動に移せますね。

皆川

怖くて動けないのは、いざという時の行動がインプットされていないだけです。いざという時のため、自分も他人も生き残れる術を、ぜひ学んでおいて欲しいと切に願います。

襲われている人の救助例

1.背後から犯人の腕をロックする

刃物を振り上げている犯人の場合、刃物を持つ腕を、脇の下から手を入れてロックする。この時、犯人の背中に体当たりするように強く当たるようにすると、犯人が驚き、怯むため、これ以上の攻撃を止めることができる。

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2.アゴを抑えバランスを崩す

刃物を持った腕をロックしながら、真横を向かせるイメージで、犯人のアゴに自分の腕をまっすぐに差し込む。人はアゴを抑えられるとバランスを崩し、簡単に倒れこんでしまう。いざという時は、アゴを狙おう。

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3.犯人を倒し刃物を取り上げる

バランスを崩した犯人を後ろに引き倒すようにすると、犯人は簡単に倒れこむ。倒れこんだらすぐに刃物を奪い取り、できるだけ遠くに放り投げる。※通り魔は複数武器を用意していることがあるため、決して油断しないこと。

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暴力事件に巻き込まれそうな時の対処

脅しのパターンを知る

暴力事件を起こす犯人は、だいたい行動パターンが決まっている。どのように行動するか、脅してくるかなどを事前に知っておけば冷静な行動が取れる。

脅されても、毅然な態度で応じる

どんなに脅されても、毅然とした態度で相手に飲まれないように対応しよう。「脅しても効果がない」と相手がひいてくれることもある。

距離を取り、逃げる

相手に立ち向かうことよりも、逃げることが何よりも大切。この時、相手の時計方向に距離を取りながら逃げると、攻撃を避けることができる。

護身術セミナー取材後記

旧大名小学校内の事件に更なる衝撃を受けながら、皆川先生のセミナーに参加した。暴漢との対峙を体感し、防ぎ逃れた体験をして、これこそが致命的な被害から身を守る唯一の方法だと確信した。20歳から55歳まで働く時代なら年間240日で8,400日、それが今や70歳までの50年となり12,000日だ。ならば、万が一はある。社員を守る新たな認識を得た一日になった。

(Bizread FUKUOKA 発行人 内田幸雄)

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麻生 泰みながわ・ひろのぶ

福岡生まれ
1秒護身術トレーナー。
防犯設備士(第04-10456号)。
株式会社STU代表取締役。
プロのボディガードの技術指導を担当する国内トップクラスの現役指導員に師事し、FBIやSWAT部隊も採用する格闘技と要人警護のノウハウを学ぶ。女性や体力に自信がない人でも無理なくできる「医療・接客業スタッフのための闘わない護身術セミナー」が、人気を集めている。