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vol.42Bizread REPORT

𠮷田 由紀子氏株式会社蓮代表取締役社長

飲食店・農産品関係者必見!
野菜ソムリエが提案する究極の食ブランディング

 飽食の時代、消費者の食の嗜好は多様性を極めるだけでなく、刻一刻と移り変わっている。こうした食品業界の実力派コンサルタントとして活躍している女性が福岡にいる。株式会社蓮の代表取締役社長、𠮷田由紀子さんだ。野菜ソムリエの豊富な知識と仲卸会社勤務の経験や人脈を武器に、販促イベント提案、飲食店のレシピ開発から、食品メーカーのPB(プライベートブランド)商品開発、スーパーでの販売促進まであらゆる食の企画提案を手掛ける。まさに究極の食に関するブランディング・コンシェルジュだ。

商売人家系の熱い血流れる

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JA 福岡市にて「価格に左右されないブランド力」を講演

𠮷田さんには商売人家系の熱い血が流れている。幼い頃、三十数店舗の飲食・サービス店を経営していた父親に、よく商売の現場に連れていかれた。そこで商売のやり方やおもてなしを肌で学んだ。「父はほかの店の料理を研究するために、週5回は家族をつれて外食するほどで、私もよく付き合わされました」と𠮷田さん。

結婚して一男一女を育てた。再就職でもと考えたとき、「自宅からも保育園からも近い」という理由で、2010年、福岡市中央卸売市場の仲卸会社、福岡中央青果の仕入営業部に事務社員として入社した。職場に入ると、結婚前にやっていた営業の血がむくむくと騒ぎだし、当時、青果仲卸では全国的に珍しかった女性営業職に志願した。

しかし、青果の営業は仕入価格の交渉が中心で、「販売先のスーパーや百貨店への売り値や売り先は先に決まっていた。長年主婦をやっていた生活者目線からは違和感があった」。

仕事に慣れてくると、イベントの企画や商品開発を任されるようになった。𠮷田さんはこれまで業者向けが主だった、カット野菜を、消費者向けに12品開発、商品化した。中でもヒットしたのが焼きそば用のカット野菜。麺と豚肉を合わせれば、ものの5分で調理できる超簡単メニューだ。こうした実績が評価されて営業企画開発課長に昇進した。

野菜ソムリエなど次々資格を取得

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お店に合ったメニューやレシピをご提案

こうしたなか、野菜ソムリエという資格を知った。野菜ソムリエとは、一般社団法人日本野菜ソムリエ協会が認定する民間資格だ。野菜や果物の魅力を知り、自ら楽しむ野菜ソムリエ(旧・ジュニア野菜ソムリエ)、その魅力を伝える野菜ソムリエプロ(旧・野菜ソムリエ)、社会で活躍する野菜ソムリエ上級プロ(旧・シニア野菜ソムリエ)がある。

「食についていろんな角度から勉強したいと思った」𠮷田さんは、2012年、野菜ソムリエプロの資格を取得した。

今ではフードコーディネーター、上級食育指導士の資格も持つ。飲食店への指導も多く行っているため、現在はワインソムリエの資格に挑戦中だ。「ワインソムリエが多い店は食べる人の気持ちを考えた、おもてなしのあるサービスができている」と考えるからだ。

循環型農業を手本に会社立ち上げ、社名は好きな野菜から

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「西鉄暮らしのセミナー」講師

2014年10月、株式会社蓮を立ち上げた。メディアにもよく取り上げられる、農事組合法人和郷園の木内博一社長の講演で知った自然循環型農業に衝撃を受けたのが起業のきっかけだった。自然循環型農業とは、畑から採ったものはできるだけ使い切って残ったものも肥料として畑に返すという考え方だ。青果のプロとして食の可能性に賭けてみようと決意した。

社名は𠮷田さんの好きな野菜の一つである蓮根から一文字を取った。「将来を見通せる縁起のいい野菜でもあるから」

スタートは食品メーカーの商品開発、売れるためのレシピ開発、売り場を作るなど販売促進イベントを企画するという一気通貫のビジネスが受けた。

事業を始めたころ、講演した農家から言われた「農業をしたこともないのに」の言葉に発奮、福岡市西区で2年間、農地を耕して様々な野菜を作った。「ブランディングすることで、私ごときの素人が作った野菜でもどれだけ売れるかを知ってほしかった」。農業を体験したことで講演の話や指導にも深みが出るようになった。

まずは自分で体験するという基本はコンサルティングの現場でも徹底している。飲食店では開店前から閉店後までいて顧客を観察する。この店の売り上げを伸ばすため、利益を上げるために何をすべきかを知るためだ。スーパーから依頼があれば、数日間は店に張り付く。同じ系列スーパーでも地域によっては客層がまったく違う。「三十代が多い地域にある店舗なら混雑のピークは夕方、高齢層が多い地域なら朝。その違いを考えずにイベントを打ってもだめ」。販売データも重要だが、現場での微妙な違いにヒントを探す。

強みはアイデアを形にすること

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スーパー・百貨店などでの販売促進

𠮷田さんの強みは「アイデアを形にできること」。ある食品メーカーの商品開発会議に呼ばれたとき、煮詰まっていた社員と話すなかで斬新なアイデアを出してたいそう喜ばれた。「なぜそんなアイデアが出るのかとよく言われるが、今までの経験からくるもので自然と生まれる」。

飲食店からのコンサル依頼も多い。レシピを考える際のネックは、野菜は保存がきかず、同じものが入手できるとは限らないことだ。これに対して𠮷田さんは、たとえば太いアスパラを使った場合、それが来月も安定して仕入れられるかどうかすぐにリサーチできる。もともと講師として全国を回るため、全国の特産品を知っており、生産者へのネットワークもあるため、仕入れにこだわったイベントの提案が得意なのだ。

PB商品やレシピ開発などの単発の仕事が多いなか、𠮷田さんが目指すのは「食全般に関わるブランディング」だ。スイカの産地である熊本県鹿本町に呼ばれたときには、「梅雨の前に出荷できるのはここだけ。雨が降る前だから糖度が高いとアピールしては」と提案した。そうすることでほかの産地とはっきり差別化できる。

ブランディングに必要なプロモーション方法も、予算やモノに合わせて提案する。予算が少なければ、飲食店なら今できるイベント、農産物直売所なら農家のお母さん自らが立つことを勧めたり、市場流通に乗りにくい規格外品ならお弁当にして販売することを提案してきた。「(人員の問題を含めて)絶対できないことをいくら提案しても意味がない」と𠮷田さん。

𠮷田さんはこうした経験談を講演する機会も多く、生産者や町おこし担当者の集まりでも行っている。また、日本野菜ソムリエ協会の認定講師も務める。

旬のメニュー・飲食店業態は

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最後に𠮷田さんが考える今流行っているメニューや飲食店の業態を聞いてみた。メニューは、野菜、魚、肉でもあまり手を加えない、素材を前面に押し出したものだという。焼いただけのブランド肉、新鮮野菜のバーニャカウダ、ツマを乗せない近海の刺身などだ。消費者は素材そのものの味にこだわる傾向が強まっているという。

一方、流行っている飲食店の業態は、「ラーメン居酒屋、うどん居酒屋などごみごみとした感じの店。品目は多いが単価が安く、かつ長居しない店」。観察眼の鋭い𠮷田さんらしい答えだ。

食に対する消費者のニーズがレベルアップする中、アイデアを形にする𠮷田さんの今後の活躍が楽しみだ。

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𠮷田 由紀子氏株式会社蓮代表取締役社長

1978年(昭和53年)、福岡市生まれ。福岡女学院卒。子育ての傍ら青果仲卸会社の福岡中央青果に勤務、生活者目線のアイデアが認められて営業企画開発課課長として活躍。2014年10月、食全般のコンサルティング会社、(株)蓮を設立。