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vol.46Special Interview

久保千春氏九州大学総長

知の拠点 九州大学 伊都新キャンパス
新設『共創学部』と産学連携が創る未来

2005年に開始した九州大学の伊都キャンパスへの統合移転が来年、人文社会科学系・農学系などの移転をもって完了する。51年ぶりの新設学部『共創学部』で育成する新たな高度人材像をはじめ、広大な伊都キャンパスを活用した産学連携による社会実証実験、世界から注目を集める水素エネルギー研究などについて、久保千春九州大学総長に今後の方向性と新たな発展に向けての構想を訊いた。

地球規模の課題を解決できる人材育成を目指す「共創学部」

地球温暖化や生物多様性の減少、宗教や民族対立など、私たちは今、地球的・人類的ともいえる諸課題に直面しています。
これらの課題は、種々の要因が複雑に絡まりあって生じているため、一つの学問体系だけでは、根本的な解決に結びつけることが困難です。

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九大生がモデルとして登場する『共創学部』のキービジュアル

来春新設する共創学部は、このような課題を解決できる新たな高度人材の育成を目指す、九州大学としては51年ぶりの新学部となります

共創学部では、文系や理系といった既存の学問の枠を超え、問題解決に関連する幅広い知識を学びます。そして、学んだ知識をどのように組み合わせれば、解決への新たな道筋が開けるかを構想し、異なる専門や知識を持つ人々と共に学び、切磋琢磨します。

さらには海外留学等を通じて、様々な経験を積み、その経験をまた、次の構想へと活かしていきます。こういったプロセスを繰り返し、絶えず変化するグローバル社会において新たな知や価値を生み出す人材を育成します。

共創学部の新設にあたっては過去17年間にわたって九州大学が取り組んできた『21世紀プログラム』における、学生自身の意思で自らの学びを創り上げてきた実績が基盤になりました。

新たな教育の実現に向けて入試制度も見直しました。従来の一般入試に加えて、AO入試、九州大学唯一の推薦入試、海外からの私費留学生や帰国子女向けの国際型入試の4つを実施します。これらの入試を通じて、多様多彩な学生を選考していきます。

今後、育成していく人材像は、大きく3つを想定しています。

  1. 国際的・地球的な課題の解決策を立案して世界に情報発信する実務家
  2. 国際社会の課題を解決するために、新たな社会の仕組みや価値の創出をデザインする専門家
  3. 文系・理系の枠を超えた諸科学の境界・学際領域の研究者

共創学部の新設は、本学にとっても新たな挑戦です。共創学部でともに学び、高い専門性と、違いを乗り越えられる高度なコミュニケーション能力、そして様々な人々と協働する力を身に付け、世界を共に創り上げていきましょう。

公認サークル『起業部』と九州・大学発ベンチャー振興実践会議

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九州大学起業部の集合写真

九州大学では本学卒業後の渡米で大成功を収めたロバート・ファン博士からの寄付で発足した起業家教育・研究組織『ロバート・ファン/アントレプレナーシップ・センター(QREC)』において、学生教育やシリコンバレー研修、海外留学などを取り組んできました。これらの取り組みは文部科学省の『次世代アントレプレナー育成事業』(EDGEプログラム)に選ばれ、今年度からは次世代アントレプレナー育成事業(EDGE・NEXT)にも採択されています。また、今年6月に大学公認サークルとして誕生した『起業部』は部員数が120人となり、大変人気です。研究成果の実用化につながるベンチャーの創出および学生の起業家精神の育成を目指します。

九州に拠点を置く大学として九州大学は九州経済連合会に加盟しており、今年2月に九経連の麻生泰会長との共同代表として、「九州・大学発ベンチャー振興実践会議」を立ち上げました。大学発のベンチャー企業が持つ技術やアイデアなどの事業化に向けて、地元企業や経済団体と一体的に支援していきたいと思います。

伊都キャンパスでの社会実証実験
九州大学の新たな取組とは

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九州大学伊都キャンパス

明るく広大な九州大学伊都キャンパスは272ヘクタールあり、単独キャンパスとしては最大級です。2005年から始まったキャンパス移転は来年度、人文社会科学系・農学系などの移転で完了します。

広大な伊都キャンパスは、すでに社会実証実験の場としても積極的に活用しています。今年1月から九州大学、NTTドコモ、福岡市、DeNAの4者によ る自動運転バスの社会実証実験を始めています。エネルギー分野においても自然エネルギーや燃料電池でつくった電気と発電所からの電気が、キャンパスにおいてどのような組み合わせで使っているかを一目で把握できる実証実験にも取り組んでいます。

また、注目を集める水素エネルギーの研究・実用化では福岡県と一緒に取り組んでおり、九州大学のカーボン・ニュトラル・エネルギー国際研究所は、世界的な研究者らが集まる水素研究の一大拠点と評価されています。大学周辺への研究開発型の企業や研究所などの進出に向けては、産業技術総合研究所や理化学研究所と提携を結んでおり、今後大きく進展させていきたいと思っています。

大学の使命は教育、研究、社会貢献です。九州大学としては、九州から全国へ、そして世界へ 発信していく大学でありたいとの思いがあります。一方、福岡はアジアの玄関口として九州の発展を目指しており、九州大学は福岡県、福岡市とも協力しながら、アジアのハブ(拠点)大学を目指しています。
現在、九州大学アクションプラン2015〜2020に基づいて計画的に事業を進めており、産学での連携や交流についても、一層推進していく考えです。そして、かつての伊都国という、中国大陸や朝鮮半島との文物の交流を担ってきた歴史ある場所に位置する九州大学伊都キャンパスを拠点に今後、さらなる発展を遂げていきたいと思います。

九州大学アクションプラン
2015~2020(骨子)

  • Ⅰ世界最高水準の研究とイノベーション創出
  • Ⅱグローバル人材の育成
  • Ⅲ先端医療による地域と国際社会への貢献
  • Ⅳ学生・教職員が誇りに思う充実したキャンパスづくり
  • Ⅴ組織改革
  • Ⅵ社会と共に発展する大学

重点取組

  • 研究教育機構創設によるイノベーションの創出
  • 新学部の設置によるグローバルに活躍する人材の育成
  • 人文社会科学分野等の再編成・機能強化による九州大学の更なる活性化
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久保千春氏九州大学総長

1948年生、鹿児島県出身。九州大学医学部卒。アメリカオクラホマ医学研究所clinical research scientist、国立療養所南福岡病院内科医長、九州大学医学部心療内科助手、九州大学医学部心身医学教授、九州大学大学院医学研究院心身医学教授、九州大学病院長、国際医療福祉大学副学長を経て、2014年10月九州大学第23代総長に就任。『九州大学アクションプラン2015~2020』を策定して、推進する。現在、九州経済連合会理事、九州・大学発ベンチャー振興実践会議共同代表、大学ネットワークふくおか会長、ILCアジア-九州推進会議共同代表、福岡地域戦略推進協議会(Fukuoka D.C.)副会長などを務める。