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vol.47Special Interview

澤田秀雄氏ハウステンボス株式会社代表取締役社長

変化の時代に新たな価値を。

画期的アイデアを次々と投入し、テーマパークを越え未来都市へと成長し続けているハウステンボス。
そんなハウステンボスを手がける澤田秀雄氏に社長として、経営者として、大切にしていることを伺った。

ハウステンボスの事業再生に取り組み、再建1年目で経常利益を生み、赤字から黒字化を果たした後も快進撃を続けるエイチ・アイ・エスグループの澤田秀雄氏は、29歳だった1980年、新宿で机2つ・電話1本だけで創業した。
その後、旅行・ホテル・航空・テーマパークなど様々な事業を軌道に乗せ、現在ではグループ全体で1万5000人もの従業員を率いる。そんな澤田秀雄氏に、ハウステンボスの事業再生の経緯と「変化の時代」に新たな価値を創造する事業経営の要諦についてお訊きした。

テーマパークから未来都市へ
進化し続けるハウステンボス

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「変なホテル」のフロントには、3体のロボットを配置。
業務を効率的にこなすことはもちろん、お客様との会話をユニークに盛り上げる。
ロボット=無機的というイメージを覆す演出が評判を集めている。

「観光ビジネス都市」を掲げるハウステンボスが現在目指しているのは、「世界最先端のテクノロジー」「花や緑などの美しい自然」、そして「文化・芸術」を3本柱とした未来都市です。

ロボットやIoT、自動化に代表される最新テクノロジーをハウステンボス場内にどんどん投入して、未来都市を実現していく構想です。具体的には、最新技術をもつ多彩なベンチャー企業や研究開発企業と組んで、ハウステンボスを舞台に実証実験を手掛けて、不具合や問題点を改善していくことで実用化を目指していきます。

未来都市に向けた取り組みの中から誕生した事業が、「初めてロボットがスタッフとして働いたホテル」としてギネス世界記録に認定された『変なホテル』です。変なホテルでは業務の約9割をロボットに置き換えており、今後建設する最新棟では最新の太陽光発電と蓄電池を採用することで、すべてのエネルギーを自然エネルギーで賄います。

現在、変なホテルはハウステンボスをはじめ、東京ディズニーリゾート近くの千葉県舞浜、ラグーナステンボス(旧ラグーナ蒲郡)の5カ所にあり、今後1年間で10棟を建設する予定です。そして、文字通り《変わり続ける》ホテルとして、常に進化し続けていきます。

このようにハウステンボスで開発した最先端の技術は日本国内に限らず、広く世界中の人々にも使ってもらいたいと考えており、ハウステンボスのある長崎県佐世保から海外へ輸出していきたいですね。

世界初、金と交換可能な電子マネーが場内に誕生

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ハウステンボスならではの広大な敷地を存分に生かしたダイナミックなイベントの数々は、国内だけでなくアジア圏からも観光客を集めている。
世界中の超一流の花火師たちが腕を競う「世界花火師競技大会」。次回は3月21日開催。

ハウステンボスでは将来、場内で電子マネー化して、キャッシュレスにします。通常の通貨である1円を電子マネーの1テンボスに交換します。このテンボス建ての電子マネーは、金との交換が可能な世界初の『兌換』電子マネーです。

世界最先端のテクノロジーの社会実験である電子マネーの裏付けとして、金1トン購入しました。その金を用いて室内を金張りにして、金細工を置いた『黄金の館』を昨年12月にオープンさせました。今後、ハウステンボスを『黄金のビジネス都市』にしようと考えています(笑)。

世界初の兌換電子マネーについても、まずハウステンボス場内において実用化した上で、日本国内や海外でも使えるようにしていきたいと思います。

優れた芸術家が集う文化・芸術のハウステンボスへ

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床も壁も天井も、全てが黄金でできた「黄金の館」では、1本6000万円相当の金塊を実際に持つことも可能だ。

文化・芸術は大切です。今後、絵画や彫刻など、ジャンルを問わずに優秀な芸術家をハウステンボスに集める予定です。呼び寄せた彼らには、住まいや働ける環境を用意して、ハウステンボス場内で自由に芸術活動をしてもらい、彼らの作品を販売できるようにします。ハウステンボスの忙しい時だけ、アルバイトとして手伝ってもらい、生活費の足しにしていただくつもりです。

今後、《文化・芸術のハウステンボス》として、優秀な芸術家が育ち、大いに活躍してもらうことで場内の文化度が高まり、さらに芸術性も兼ね備えた都市になっていくでしょう。特に若い芸術家の存在は、都市に芸術的な雰囲気をもたらします。欧米でも同様の傾向がみられるだけに、ハウステンボスではさらに高めていくために文化度の高い都市にしていこうと考えています。

制約を乗り超え入場者数を倍増させたイベント戦略

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日本最多700品種ものチューリップが咲き乱れる「100万本のチューリップ」(~4月15日まで)。

テーマパークの条件は一にマーケット、二にアクセスと言われています。しかし、日本の西端にあるハウステンボスのマーケットは首都圏の10分の1以下しかありません。その上に東京から空路で約3時間、福岡からも約2時間も掛かり、さらに長崎県佐世保市近辺は雨の日が多いなど、テーマパークの成立条件から大きく外れています。

このため、再建を依頼された当初は断り続けました。しかし、地元から熱心にお願いされたので、お引き受けした次第です。そして、私がハウステンボスへ移り住んで2010年4月から事業再生がスタートしました。

事業再生にあたって、ハウステンボスのスタッフに「明るく元気に楽しく仕事をしよう」と呼び掛けながら、無駄をなくして労働生産性の向上に努めました。生産性を2割上げ、売り上げを2割上げたら、1・5倍近い改善になります。すると、ほとんどの事業は黒字になります。事実、ハウステンボスも事業再生に取り組んだ翌年には、黒字化ができました。

生産性向上とともに取り組んだ売上拡大策では、いろいろなイベントを仕掛けました。「100万本のバラ」や「世界最大のLEDイルミネーション」、「九州一の花火大会」など、ハウステンボスの広大な敷地を活かしたナンバーワンやオンリーワンとなるイベントを数多く打ち出しました。その結果、私の就任時に141万人だった入場者数は、現在300万人弱と倍増しています。

18年間赤字のハウステンボスを数か月で
黒字化した澤田経営

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世界最大1万3000球ものイルミネーションが輝く「光の王国」。

事業の黒字化に必要なのは、トップの判断とやり方次第といっても過言ではないでしょう。

黒字化のため、利益の出るビジネスモデルに作り変える、スタッフのやる気を高めることはもちろん必要です。それよりも重要なのが、日々即座に判断し、スピード感を持って対応していくこと。

仮に間違っていたとしても、後で修正すればいいだけです。一番良くないのは、やらないことであり、改善を進めていくスピード感がないことだと思います。

起業家や経営者に必要なのは、夢や希望、目標を持って、企業を経営していくこと。そして、それをやり抜く信念や継続力が必要です。「夢や目標を実現する」という信念を持ち、やり続けることが何よりも大切だと思います。

Manegement Poin
~経営者の着眼点~

  • Q 新規事業に進出する場合の判断基準について教えてください。
    少々チャレンジャーブルでも、世の中のためになり、会社のためにもなるならチャレンジします。失敗することもありますが、チャレンジしないと新しいものはできません。
  • Q 将来性がある新事業を興すための着眼点について教えてください。
    AI、IoT、その他すごい変化の時代です。ですから、ボクはすごいチャンスがあると思います。古いモノは、いずれ新しいモノに取って変わられる可能性がありますから、新しいことにチャレンジしていかないと、逆に危機になっていくと思います。時代に合ったチャレンジをしていって、時代に合ったシステムを取り入れていかないと、それをしない会社は、いずれじわじわと落ちていくのではないでしょうか。
  • Q 新規事業に進出する際の心構えとその心得について教えてください。
    やるときは必ず成功させるという気持ちが大切です。あとは、お客さまによろこんでいただく、そして事業なので利益をきちんと出すという気持ちが大切です。

自転車に乗り、ハウステンボス園内のあちこちを周り、徹底的な現場主義を貫いている澤田氏。
こうした地道な努力が、黒字化経営の基板となっている。

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澤田秀雄氏ハウステンボス株式会社代表取締役社長

さわだ・ひでお/1951年、大阪府生まれ
高校卒業後、旧西独・マインツ大学経済学部へ留学。1980年 インターナショナルツアーズを設立(1990年に社名をエイチ・アイ・エスに変更)。1995年 エイチ・アイ・エスを店頭公開。1996年 豪ゴールドコーストにホテルを開設。1998年 国内第4番手の航空会社となる。スカイマークエアラインズを他社の半額運賃で就航させる。1999年 エイチ・アイ・エス協立証券(現エイチ・エス証券)代表取締役社長に就任。2003年 モンゴルAG銀行(現ハーン銀行)の取締役会長に就任。2004年 エイチ・エス証券を大証ヘラクレスに上場。2010年 ハウステンボス株式会社代表取締役社長に就任