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vol.49SPECIAL INTERVIEW

麻生 泰福岡地域戦略推進協議会会長

福岡をアジアの尖がりに

アベノミクス(安倍政権の経済政策)によって日本だけでなく、福岡市も大きく変わろうとしている。
インバウンド(訪日外国人客)の急増、「グローバル創業・雇用創出特区」の認定、天神地区のビルの建て替えを促進する「天神ビッグバン計画」――。
その中で活動しているのが福岡地域戦略推進協議会(FDC)だ。
同協議会会長で、九州経済連合会会長でもある麻生泰氏に福岡の将来像などを聞いた。
(文=江口一樹 写真=目原裕士)

産官学民連携による
シンク・アンド・ドゥタンク

FDCは何かということを教えてください。

福岡の成長戦略策定から推進まで一貫してやっていく、プランを書くだけじゃなくてそれをアクションにつながるようにバックアップしていくことがFDCの役割です。さらに、それを官学民が一体となって「シンク・アンド・ドゥ」でやっていくのが特徴です。
福岡都市圏の中でも福岡市のようにポテンシャルを持っている街は全国でも珍しいと思うんですよ。日本全体の人口が縮小傾向なのに年間一万人以上も人口が増えている。このような増加傾向は沖縄県と福岡市くらいしかありません。さらにアジアに近いという地理的なアドバンテージがあります。身近な中国や韓国の経済は、成長して伸びています。

会長は九経連の会長でもありますね。

私が兼務している九経連のミッションは「九州から日本を動かす!Move Japan forward from 九州!」です。九州は他の地域に比べて恵まれた場所だと思います。全国のGDP(国内総生産)の伸び率よりも九州の方が低い状態では困ります。全国をけん引する責任がある。九州から国を引っ張っていくという思いも持っていますので、FDCの目指す将来像である「東アジアのビジネスハブ」もチャレンジングでやりがいのある目標だと思っています。

九州の尖がりが福岡

九経連とFDCの関係性、役割分担は。

まず、九経連は山口・沖縄まで9県をカバー、FDCは福岡都市圏を核にしており、エリアの違いがあります。それと、役割が九州と福岡都市圏ではちょっと違いますね。FDCの場合は都市圏単位で、これから伸びる分野であるITやAIといった分野に関心や期待感が強いと思う。
九経連でもITやAIをカバーしないわけじゃないけれど、オール九州単位でどうするかと考えた場合、第一次産業への取り組みは欠かせません。
例えば、ある家族。父親は付加価値の高い作物を作る農業を営んでいて、年収1000万円。職場まで10分で行けるし、昼ご飯も200円程度の支出で食べられる。息子さんは東京で働いていて、年収600万円。職場まで1時間かけて通勤して、昼ご飯は800円。どちらが豊かな暮らしなのでしょうか。九州は生活コストが安いから、収入が多少少なくても、生き生きとした人生を送ることも可能です。こういった姿を目指したい。そのためにはどうしても第一次産業の収入を上げていかなければなりません。第一次産業の活性化によって安倍総理の期待する地方創生が起こるのではないかと思います。運のいいことにアジアから日本のものを買ってくれる流れが出来ています。農業も漁業も林業もフォローの風が吹いていると思います。
オール九州で地域全体の魅力を作り、そして、その中での尖がりを作る。それが福岡市。その尖がりをFDCで、参画する域内外の企業も絡めて、さらに尖がらせたいと思います。「日本を九州が引っ張ってくれたのは大きい」と世の中に認知される。そして、そのコアが福岡都市圏であることが、我々のやりがいであり、目指す姿だと思っています。

ストレッチゴールとしての
「東アジアのビジネスハブ」

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FDCは目標として2020年に雇用プラス6万人、GRP(域内総生産)プラス2・8兆円、人口プラス7万人を達成して、「東アジアのビジネスハブを築く」としました。それを実現する取り組みの一つであるMICEの開催件数が順調に伸びています。

FDCでも観光部会で「Meet i ng Place Fukuoka」の設立を支援するなど、ポテンシャルの高い領域として取り組んできました。また、福岡で会議を開くと、会議以外にも楽しんでもらえるものを提供できる。例えば、温泉や買い物に行けるし、最近では農家で宿泊や各種体験をするコースもあります。安心・安全・清潔・美味しいものがある日本ならではのホスピタリティも提供できる上にアクセスもいい。
MICEに取り組みつつ、FDCは福岡都市圏が「東アジアのビジネスハブ」となることを目指しています。
これを私は「ストレッチゴール」と捉えています。背伸びしてやっと届くという、イージーでも不可能でもない、ストレッチの効いたゴールのことです。これに関連して、福岡市の高島市長が「アジアのリーダー都市」と言われることに我々は共感しています。
確かに、港湾機能を充実させなければいけませんし、空の利便性もよくしなければいけません。それも大事なのですが、街全体のコミュニケーションスキルを上げることも大事です。例えば、サービス産業全体で、外国語を話す力を上げて行くような取り組みが重要です。それが、MICEを通して福岡ファンを作っていくことにつながります。「ストレッチゴール」を達成するためには、あらゆることに目配せする必要があると思います。

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アジアに近いことが福岡最大の利点

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国内の話ですが、転勤した人の奥さんが旦那さんより福岡を気に行って住みつくということがありますよね。

そうですよね、気に入って家を買う人もいます。彼らにとって東京でも安全・安心なんだけれど、福岡は外からの人を受け入れるオープンな気質があって、生活コストも安い、食事もおいしい、そういった場所なんでしょう。

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福岡市、ボルドーメトロポール、福岡地域戦略推進協議会、テクノウエストの4者によるスタートアップに関するMOUの締結

今年、アジア開発銀行が初めてマニラと東京以外の会議の場所として福岡市を選びました。「人が集まるかな、50〜60人くらいかな」と思っていたら200人以上が集まりました。今回来ていただいた方にリピートしてもらえるように、福岡のファンを作ることができればと思います。
また昨年、福岡市とボルドーメトロポール、FDC、テクノウエストの4者がスタートアップに関する覚書を結びました。そのとき、ボルドーの方が「日本もイギリスもフランスも市場は成熟している。ただ、あなた方にはアジアが近いというアドバンテージがある。アジアは今後、15年から20年は伸びるだろう。」と言っていました。
そして、「私たちもアジアに進出したいが、アジアに最初から行くのは難しい。インドネシアやマレーシアのパートナーを探すときに福岡に拠点を置いたほうがいい」と言っています。このように、アジアの活力をいかにこの地域に取り込んでいけるかは、FDCの活動のポイントになります。

《 国際会議開催件数全国第2位8年連続の快挙!! 》

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都市再生部会は、経済産業活動と市民の暮らしを支える質の高いまちづくりを目指している。2017年度は、持続的な都市の成長を支えるPPP(パブリックプライベートパートナーシップ)や、地域戦略に資する広域的な都市再生戦略のあり方について専門家委員会に意見を求め、新たな戦略を検討した。

福岡の魅力の発信力を高めよ

ただ、残念なことにまだ海外に出ていく企業は少ない。

確かにまだ数は少ないし、勢いがついてないです。我々の広報力、魅力の発信力が足りないのかもしれません。
そういう意味でも、MICEで福岡に初めて来た方々が「もう一回来てマーケットリサーチしようか、ローカルパートナーを探そうか」というきっかけにしてもらうことが大切です。
FDCや九経連の会長をやっていて、一番に思うのはすべてトップ次第だということです。今、福岡市や日南市の市長はビジョンを持って街を変えたり、自分の街の強みを見つけて尖がらせています。アジアが豊かになっている分、15 年前に比べれば本当に可能性にあふれている時代だと思います。アジアを中心とした外国人観光客が4年間連続で30%以上伸びているのに、「なぜそれを、つかまえきれないのか」と。
今の時代を生きる人は、本当は恵まれた環境にいるのだけど「危機感なきじり貧」で時間だけ過ぎていく。そして、できない理由だけ言う。そういうリーダーが多すぎますね。組織も地域も強みを見つけて尖がるって大切なこと、もっと尖がらなけりゃ。

外資参入を期待したい「天神ビッグバン」

その中で、福岡市が進めている「天神ビッグバン計画」が街を大きく変えようとしています。

この街はコンパクトシティの典型ですよね。東京の中心部だと目的地間の移動は30分くらいかかることが多いのですが、福岡の中心部なら15分から20分圏内。空港もそうです。コンパクトな街の強みを生かして、天神の再開発地区にはぜひ外資系企業も積極的に入ってくるといいですね。
その際に、日本には致命的なアキレス腱があります。先ほども言ったコミュニケーションスキルだと思うんですよ。
日本語は地球上の2%の人しか話しません。一方で、中国語と英語が出来ると、合わせて30億人くらいの人とコミュニケーションが取れるわけです。日本は2020年から小学校3年生は英語が必修になるということですが、とても遅い印象があります。
もう1つのネックが医療と教育です。外国人から、「子供たちはどこに預けるの?」、「病気になったらどこの病院で言葉が通じるのか」とよく聞かれます。海外から家族を連れて来ようと思った時に、この2つはとても重要です。

福岡市のビジネス環境の利点の1つに開業率が高いというのがあります。

それはすごくいいことだと思います。市長自身がスタートアップ企業を呼び込む環境を国に交渉してでも作ろうという気概を持っています。また、市レベルで判断できることは積極的に進めていくという気持ちで取り組んでいることが、実績としても現れているんでしょうね。

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MICEの推進と新たな観光ビジネスモデルを創造する「観光部会」

観光部会は、MICEを活用した福岡都市圏の産業振興を中心に活動を行っている。2017年度は、観光ビジネスモデル検討分科会で福岡市の「ゲートウェイ機能」を活かした新たな観光のビジネスモデル構築に取り組み、創出型MICE検討分科では、「CEDEC+KYUSHU 2017」や会員同士のビジネス交流会等を実施した。

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「福岡版スマートシティ構想」で未来の都市を実現する「スマートシティ部会」

スマートシティ部会は、福岡版スマートシティ構想の実現を目指している。2017年度は、法規則とビジネス分科会において専門家を招き法規制等の理解促進を、新たな価値交換システム分科会ではフィンテック及びブロックチェーン全般を、サイバーセキュリティ分科会ではサイバーセキュリティ分野への理解を深めた。

福岡にいることがいかに幸せか、ストレッチゴールを持って生きよう

最後に、若い経営者やビジネスマンにメッセージをお願いします。

まず1つは、「How lucky we are」、いかにわれわれは幸せかと思うことです。2018年に日本にいる、福岡にいる、こんなに恵まれている人は全世界73億人のなかでも少ない。感謝するだけじゃなくて、どう地域に役立っていくかを考えないといけない。そのためには与えられた一度の人生をどう生きるか、自分の身の丈にあったストレッチゴールを設定することが大事です。
「Not easy but not impossible」というストレッチゴールを持って戦う。
60歳なんて人生90歳から見たらまだ3分の2。一日で考えるなら午後4時ですよ。午後4時から真夜中まで一日の最高の時間なんだからここを楽しんでもらいたい。そのためには、いかに午後4時以降のことを午前中、午後に考えておくかが重要です。18歳で大学に入ったのがピークとか、22歳で会社に入ったときがピークというのは残念。年を取ったら、もう戻れないわけだから、次の世代のために、自分の地域のために、今と向き合っていく。そういう姿はきっと先人も見ている。
若い人材を戻ってくる気にさせるかどうかも重要です。中小企業の後継者難には構造的な問題もあるかもしれないけど、経営者が夢を持っていないとダメ。「60歳過ぎても、生き生きと働いている」という姿を九州人として作っていきたい。第一次産業の就業者は今67、8歳が平均だけど、次世代が戻ってこなくて平均が77、8歳になったらまずいですよね。そういう意味でも、現役の我々の世代もストレッチゴールに向かって果敢に取り組む姿を次世代の若い人材に見せることが必要です。

福岡都市圏としてのストレッチゴールを具現化していくのがFDCの仕事だと。

そうです、それをお手伝いしていく。それには伸びているアジアに進出しない手はない。毎年30%伸びているインバウンドをどう取り込んでいくか。また、留学生を採用したりして外国人に慣れていく。外部をジャパナイズするのではなく、我々がグローバライズしていく。
このままでは、「恵み多すぎて危機感なきじり貧日本」になってしまいます。日本の名目GDPは20年間ほぼフラットのままです。20年前は世界全体の14%あったのに、今や6%なんですよ。ただ、そんな危機的な状況ですが、福岡にいるというのは恵まれていると思います。
FDCも「福岡都市圏が東アジアのビジネスハブになる」というストレッチゴールを目指す中で、福岡をアジアの尖がりにしたいと思います。

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九州の食のポテンシャルアップに挑戦する「食部会」

食部会は、九州の食産業の高付加価値化を図り、域外移出に挑戦している。2017年度は、地場食品関連企業の更なる売り上げ向上、販路拡大及び地域経済の振興を目的としたBtoB、BtoC事業である「フードエキスポ九州2017」を実施した。観光や街づくりなど食に関連するテーマと相乗性の高い連携施策にも取り組んでいる。

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人・企業・投資を呼び込み、域外移出にチャレンジする「都市再生部会」

都市再生部会は、経済産業活動と市民の暮らしを支える質の高いまちづくりを目指している。2017年度は、持続的な都市の成長を支えるPPP(パブリックプライベートパートナーシップ)や、地域戦略に資する広域的な都市再生戦略のあり方について専門家委員会に意見を求め、新たな戦略を検討した。

FDCは福岡都市圏を核として、九州、さらには隣接するアジア地域との連携を図り、事業性のあるプロジェクトを推進しています。

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《 プロジェクト・コンソーシアム 》 1.九州廃校サミット 2.国連ハビタット 3.福岡ヘルス・ラボ

FDC 福岡地域戦略推進協議会 http://www.fukuoka-dc.jpn.com/

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麻生 泰あそう・ゆたか

1946年、福岡県飯塚市生まれ
慶應義塾大学法学部、オックスフォード大学ニューカレッジ卒
1973年 株式会社大沢商会入社
1975年 麻生セメント株式会社(現株式会社麻生)監査役
1979年 同社代表取締役社長
2010年 株式会社麻生代表取締役会長(現任)
2013年 九州経済連合会会長(現任)/福岡地域戦略推進協議会会長(現任)