野津浩嗣株式会社アニメートエンタープライズ

vol.43第3回野津浩嗣誌上セミナー

野津浩嗣氏株式会社アニメートエンタープライズ

やる気がなさそうな部下をどう育てる?!

誌上セミナーを担当している野津浩嗣です。「なぜわかっているのにやらないんだ!」と大きな声で部下を叱責したり、心の中で呟いたりした経験がある方、多数いらっしゃるのでは・・・?
しかしこれはダブルバインドというNGワードなのです。 第3回目はこのような部下のモチベーションを上げるにはどうしたらいいのかについて考えてみましょう。

なぜ、ほめることができない?

第1回、第2回では今どきの若手の叱り方を解説しました。その中で、効果的に叱るには「返報性の原理」を理解することだとお伝えしました。たくさんほめる人はたくさん叱っても良い結果が得られます(返報性の原理については第2回を参照)。そこで、まずはほめ方について考えてみましょう。

部下をほめるのはなかなか難しいとおっしゃる方も多いのではないでしょうか。なぜ私たちは部下をほめ難いのでしょうか?

  • ①ほめ方を知らない
  • ②自分のことが精一杯で、気が回らない
  • ③ほめると相手がつけあがると思っている
  • ④相手より優位に立ちたいと思っている
  • ⑤個人的な好き嫌いに影響され、嫌いな人の良いところが見つからない

このような理由が考えられます。

しかし、部下は思いのほか上司の言動をチェックしています。周囲に目もくれず誰のこともほめなければ、「自分の都合や成績ばかりを考えているエゴイスト」と上司のことを見ています。反対に誰かをほめている場面を見れば、「周囲のことをよく見てくれている人」と評価します。

ほめ方にもいろいろある

「ほめる」とは、部下が出した成果、良い行動を評価し伝えることだけではありません。相手の成果や成長、変化に気づき、それを言語化してはっきり伝えることです。相手に対して「あなたは大事な人」「大切にしている」「感謝している」「メンバーの一員として認めている」などを伝える全ての行為や言葉が「ほめる」です。

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これは、『上司に使って欲しい部下のモチベーションが10倍アップするほめ言葉』です。ぜひ使ってみてください。

お気づきの方もいらっしゃると思いますが、今回ご紹介している言葉の多くはⅠメッセージになっています(Ⅰメッセージについては第1回を参照)。相手の記憶や感情に残りやすく、抵抗感なく受け取りやすいという特徴があります。せっかくほめるのですから、部下の心に響くように伝えたいものです。

【ケース】
やる気がなさそうな部下には

目標を掲げてもなんとなく生返事で情熱が伝わらない。熱くならない。所謂「やる気がなさそうな部下」です。このような部下がいると、ついイライラしてしまいます。しかしここは一つ冷静になって、相手の立場から状況を分析してみましょう。

部下は「自分がやったことを評価されない」「報われない」という気持ちが少しずつ蓄積されてきて、最終的に「もういいや」という気持ちになってしまっているのです。「どうせ頑張っても評価されないから、考えても無駄」と心を閉じてしまったのです。したがって、彼らに対しては、まず「この仕事の目的は何だと思うか」という対話が必要です。「目標に向かってどんなプランを立てるのか」「どんな行動をとるか」という話し合いよりも、まずはこの仕事の目的についての「なぜ」を理解させない限り、スタートを切れません。

NGワードはズバリ「なんでわかっているのにやらないんだ」です。彼らの頭の中では「やったってどうせ認められないんでしょ」という、自分がそれをしない言い訳が既にできてしまっているのです。また、このタイプに限った話ではありませんが「お前、やる気はあるのか」といった発言は口にすべきではありません。この表現は質問の形をとった責め文句です。その証拠に「はい」と答えれば「その態度でやる気があるというのか!ふざけるな!」と叱られ、「いいえ」と答えると「ばかやろう!しっかりやる気を持て!」と言われる。このような質問はダブルバインドと言うのですが、絶対に避けてください。彼らは心の中で「そのやる気を奪ったのは誰だよ!」と思っています。評価はやる気と繋がっているのです。

まずは「仕事の目的は何なのか」「これをやると、自分にとってどんな体験になるのか」「どんな成長・スキルアップに繋がるのか」について懇々と話し合ってください。

NHK「なるほど実感報道ドドド!」にコメンテーターとして出演。
NHK「なるほど実感報道ドドド!」にコメンテーターとして出演。

もう一つ、やる気のない人に最も効果があるのは「人の役に立っている」という体験をさせることです。人は、役に立てた実感を得られるからこそ頑張れるのです。お客様でも上司でも同僚でも「ありがとう」と言われたら非常に心が満たされるでしょう。ですから、上司のあなたは率先して部下に対して「ありがとう」を伝えることが大事です。
「君がこのチームにいてくれて助かったよ」
「あなたの頑張りが、お客様の満足に繋がったんだよ」
「君の○○のアイディアがこの成功を生んだんだ、ありがとう」
と、頻繁に声をかけてあげることこそが、やる気をつくっていくのです。短く「よくやった」だけでは足りません。感謝の思いを伝えて「そうか、自分は求められているんだ」「役に立っているんだ」ということに気づかせてあげてください。決して「やる気がない」と断定して叱ってはいけません。

ただし、自分の態度がみんなのやる気を奪っている現実に気づかせることは大切です。叱るとしたら「みんなのエネルギーを奪っていることに気づいている?」と尋ねることです。同じ叱るでも「お前、やる気あるのか!」とは、天と地ほどの差がありますよね。感謝の言葉も部下への「ほめる」であることを知っておいてください。

野津浩嗣株式会社アニメートエンタープライズ代表取締役

野津浩嗣株式会社アニメートエンタープライズ代表取締役

1958年生まれ、島根県出身。政府特殊法人日本道路公団を経て、1990年に研修業界に転職。心理学、行動科学、行動心理学を応用した「リーダーシップ論」を基礎として、企業、病院、自治体など全国の様々な業界分野で3500回以上の研修や講演を実施している。その「人づくり」にかける情熱が参加者の好評を得、約105,000人、600社以上の研修実績を持つ。特に人気が高い研修プログラムをまとめた「人がおもしろいように育つホメシカ理論」(梓書院)を出版。