野津浩嗣株式会社アニメートエンタープライズ

vol.42第2回野津浩嗣誌上セミナー

野津浩嗣氏株式会社アニメートエンタープライズ

今どきの若手をどう育てる?!【後編】

前回から誌上セミナーを担当している野津浩嗣です。前回の「今どきの若手をどう育てる?!」を読んでいただいた方から、「分かりやすかった」「すぐに使ってみた」などうれしいお声を頂戴しました。改めて今どきの若手の育て方は、業界・業種を問わず多くの方が抱えていらっしゃる課題であることを再認識しました。そこで今回は、さらに効果的に今どき世代を叱るためのポイントとコツをお伝えする「今どきの若手をどう育てる?!後編」です。

上手く叱るとは?

第1回では、今どきの若者の特徴とその向き合い方を中心にお話ししました。ほめられることに慣れている今どき世代に対していかに指導するか、効果的な「叱り方」について触れましたが、実践された方々にお尋ねします。「実際にうまく叱ることができたでしょうか?」
「きちんと伝わったのかよくわからない」「思ったより反応が得られなかった」という方もいらっしゃるかもしれません。
その方により上手くいくポイントを今回は紹介します。まずは前回とりあげた「Iメッセージ」を思い出してください。

Ⅰメッセージは「枕詞」でより効果的に

前回も少し触れましたが、「Iメッセージ」とは、「私は○○です」というように「私(I)」を主語にする伝え方です。
 このIメッセージに「枕詞」をつけることでさらに相手に響くメッセージとなります。この枕詞は、具体的に次のようなものがあげられます。

「今、話しても大丈夫ですか。(……なのが残念です)」
「提案してもいいですか。(今よりさらにできるようになるには……してはどうでしょうか)」
「ちょっと言い難いことがあるんですが、言ってもいいですか。(今の言い方をすると、あなたの良いところが伝わらないですよ)」
「さらに活躍してもらうために、(……をお願いしたいです)」

叱られる・注意されると思うと、誰でも無意識のうちに相手の発言に対して身構えてしまうものです。そこですぐに直接の内容を伝えてしまうのではなく、ワンクッションおくことによってあらかじめ相手にメッセージを受け取ってもらえる環境を作ります。相手の聞く耳を立てること、受け取る準備をしてもらうことが大切です。
 さらに重要なのは、叱る時は「人」に焦点をあてないことです。そもそも問題を解決するためには、問題となっている「事柄」を明らかにする必要があります。ですが、日頃私たちは人に焦点をあてた「叱り言葉」を使ってしまいがちです。

つい使ってしまうこんな「叱り言葉」がNG!

NGとなる「叱り言葉」としては以下のようなものがあげられます。

まず、「べき(はず)」です。「べき(はず)」は個人の考え方や価値観を表す言葉です。例えば「この場合は、すぐ○○するべき」「ミスをしたときは○○するのが常識のはず」という言い方。
この表現を使うと相手の考え方や価値観が自分と異なっている場合、意見を押し付けられたように感じます。意見を押しつけられて、良い気持ちになる人はやはりいないものです。

次に「絶対・いつも・必ず」です。「あなたの方が絶対悪い」「あなたはいつも失敗する」「あなたは必ず何か抜けている」のような言い方です。これらの表現は100%否定することになるのでNG。このフレーズで叱られると、「いつもじゃないし」と相手に対して反発が生まれてしまいます。

そして最後は「why(なぜ、なんで)」です。最も使ってしまいがちな言葉ではありますが、このように言われると相手は咎められているように感じます。「なぜ何回も同じことを言わせるの?」「なんで提出期限を守らないの?」実はこのような言い方は、「なぜ」「なんで」の後ろに「あなたは」という言葉が隠れているのです。

その結果、「なぜあなたは何回も同じことを言わせるの?」「なんであなたは提出期限を守らないの?」と人に焦点をあてた咎め質問になってしまいますので、部下もこのように聞かれるとつい「だって……」と言い訳をしてしまいます。

叱っても伝わる大前提とは

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このように叱るシーンでは、表現方法が相手への伝わり方に大きく影響してきます。「叱る」ことでメッセージをより効果的に伝えるには、ある大前提を踏まえておく必要があります。
大前提とは、返報性があることを理解する必要があります。人間は人から良くしてもらうと、その人へお返ししたくなるという『返報性の原理』が働きます。人から施しを受けると、多くの人はお返しをしたくなるのです。

たくさんほめてくれる上司は、部下にとって「自分を認めてくれた」「自分のことを見てくれる」「気にかけてくれている」と感じられ、信頼できる人物といえます。そのような上司であれば、叱られても「あれだけ認めてくれている人が叱ったり注意したりするのは、きっと自分のために言ってくれている、自分にとって大切なことなのだろう」と好意的に受け取れます。

このように日頃から「相手を気にかけて」「たくさんほめる」ことで、相手との信頼関係を作り上げていれば、ほめるメッセージ同様、叱るメッセージもきちんと伝わるものです。

突然ですが、振り子の動きを思い浮かべてみてください。振り子というのは左右同じ振れ幅にしか動きません。この幅がどちらか一方に偏ることはないのです。「ほめる」「叱る」にも同じことが言えます。振り子の玉を「ほめる」と「叱る」で考えると、左右同じ位置(高さ)にあります。したがって、たくさんほめる人はたくさん叱っても良い結果が得られます。普段あまりほめることのない人は、叱ってもあまり効果はありません。

対極にある「ほめる」「叱る」。この2つの量を増やし、質を高めることによって指導スキル全体の幅を広げることができます。

効果的な「ほめ方」「叱り方」が身に付くことで、無理に説得することなく自分の意見も聞き入れてもらいやすくなり、仕事や人間関係がスムーズにいきます。そうすれば、成果に結びつきやすくなるといういいスパイラルを生み出すことができるのです。

このように、効果的に叱るためにはほめることが大切です。次回は、「ほめる」に焦点をあて、「こんな部下、こんな時にはどうやってほめるの?」といった、ケース別のほめ方について取り扱います。

野津浩嗣株式会社アニメートエンタープライズ代表取締役

野津浩嗣株式会社アニメートエンタープライズ代表取締役

1958年生まれ、島根県出身。政府特殊法人日本道路公団を経て、1990年に研修業界に転職。心理学、行動科学、行動心理学を応用した「リーダーシップ論」を基礎として、企業、病院、自治体など全国の様々な業界分野で3600回以上の研修や講演を実施している。その「人づくり」にかける情熱が参加者の好評を得、約105,000人、600社以上の研修実績を持つ。特に人気が高い研修プログラムをまとめた「人がおもしろいように育つホメシカ理論」(梓書院)を出版。